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[AOS17-P02] 急潮予測に向けた豊後水道の御五神島周辺における流れと乱流混合の観測
キーワード:乱流混合、島影ウェーク、潮汐流、急潮、鉛直渦拡散
豊後水道では夏季に黒潮系暖水の突発的な侵入現象である急潮が発生し、沿岸の生態系や漁業に影響することが知られている。豊後水道の急潮の発生には、南方を流れる黒潮の前線波動に加えて水道内部の鉛直混合が関わることが明らかにされている。急潮による漁業被害を防ぐためには高精度の急潮予測が必要とされるが、その実現のためには、外洋側の黒潮の擾乱と沿岸側の乱流拡散の双方を数値モデルによって適切に再現する必要があると考えられる。本研究では、科研費基盤B研究「新世代衛星・現地機動観測を融合した突発的な黒潮の沿岸進入過程の予測と理解」(JP21H01444, 研究代表者: 美山透)及び愛媛大学愛媛大学沿岸環境科学研究センター共同利用・共同研究拠点LaMerの支援により、乱流微細構造の計測に基づいて豊後水道の鉛直混合過程を明らかにするとともに定量化を行い、急潮予測に資することを目的とする。
乱流の観測は、急潮に伴う暖水の北上に鉛直混合が重要な役割を担う海域だと考えられる愛媛県宇和島市沖の御五神島周辺において実施した。2022年7月の大潮後から小潮期にかけて、愛媛大学沿岸環境科学研究センター調査実習船「いさな」による調査を行い、乱流微細構造プロファイラにて乱流強度と成層のデータを、超音波ドップラー流速計にて流速のデータを得た。
調査時には黒潮流路が四国南方で南偏しており、黒潮の前線波動が豊後水道へ波及する状況になかったため急潮は生じなかった。衛星海面水温からは御五神島周辺は調査期間を通じて冷水域となっており、周辺に比べて鉛直混合された海域であったことが認められた。現場観測からは、御五神島周辺では半日周期の潮汐に伴い地形性のウェークが生じ、水平・鉛直的なシア流が流れ場として卓越していたことが明らかとなった。御五神島の北東部では、表層から亜表層において10-3 m2 s-1、中層から底層において10-2 m2 s-1の鉛直拡散係数が平均値として得られ、沿岸域としても高い鉛直渦拡散が生じていた。特に大潮に近い時期の下げ潮時には、10-1 m2 s-1に達する著しい鉛直拡散が生じ、表層から中層において水温が低下するイベントが捉えられたが、観測された鉛直拡散や鉛直移流ではこの水温低下を説明できず水平的な移流が寄与していると考えられた。本海域の鉛直混合過程を明らかにするためには、島周辺部だけではなく同海域の日振島と戸島間などの海峡部における混合と移流過程の理解が必要である。
乱流の観測は、急潮に伴う暖水の北上に鉛直混合が重要な役割を担う海域だと考えられる愛媛県宇和島市沖の御五神島周辺において実施した。2022年7月の大潮後から小潮期にかけて、愛媛大学沿岸環境科学研究センター調査実習船「いさな」による調査を行い、乱流微細構造プロファイラにて乱流強度と成層のデータを、超音波ドップラー流速計にて流速のデータを得た。
調査時には黒潮流路が四国南方で南偏しており、黒潮の前線波動が豊後水道へ波及する状況になかったため急潮は生じなかった。衛星海面水温からは御五神島周辺は調査期間を通じて冷水域となっており、周辺に比べて鉛直混合された海域であったことが認められた。現場観測からは、御五神島周辺では半日周期の潮汐に伴い地形性のウェークが生じ、水平・鉛直的なシア流が流れ場として卓越していたことが明らかとなった。御五神島の北東部では、表層から亜表層において10-3 m2 s-1、中層から底層において10-2 m2 s-1の鉛直拡散係数が平均値として得られ、沿岸域としても高い鉛直渦拡散が生じていた。特に大潮に近い時期の下げ潮時には、10-1 m2 s-1に達する著しい鉛直拡散が生じ、表層から中層において水温が低下するイベントが捉えられたが、観測された鉛直拡散や鉛直移流ではこの水温低下を説明できず水平的な移流が寄与していると考えられた。本海域の鉛直混合過程を明らかにするためには、島周辺部だけではなく同海域の日振島と戸島間などの海峡部における混合と移流過程の理解が必要である。