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[AOS17-P03] 東シナ海陸棚斜面域における水塊構造
~2021-2022年に行った観測結果速報~
キーワード:東シナ海、黒潮、低塩分水、貫入
東シナ海における黒潮・潮流・乱流等の海洋物理学的現象は、海象観測の観点から興味深いだけでなく、水路測量の観点からも、懸濁物質の輸送過程と関連があると言われる地形・地質構造の形成過程を考察する上で関心が持たれている。本発表では、東シナ海の陸棚斜面域において、投下式電気伝導度水温水深計(XCTD : Expendable Conductivity Temperature Depth Profiler)と船底装備の多層音波流速計(ADCP : Acoustic Doppler Current Profiler)を用いて取得した水温・塩分・流速データの試行的解析結果について速報する。
まず、2021年8月に海上保安庁測量船「平洋」により測線上の航行観測を行った結果、性質の異なる水塊 ; 黒潮水と陸棚水が分布していることを見出した。水塊分類の古典的な方法であるクラスター分析を行い、各クラスターの地理的分布とポテンシャル水温、塩分並びに流速分布を比較したところ、陸棚斜面部の水深60-80mにおける陸棚から黒潮水への低塩分水の張り出しと、黒潮から陸棚底層への高塩分水の這い上がりが確認され、これらにより黒潮水と陸棚水の混合が生じていることが示唆された。低塩分水と黒潮水の境界付近については、万田ほか(2001)において二重拡散対流の可能性が示唆されており、本データに対しても不安定の指標として用いられるTurner角を算出したところ、低塩分水の張り出し付近でソルトフィンガーが発生し得る75-85度の値が分布する傾向が見受けられた。また、2022年に陸棚斜面域において、海上保安庁測量船「光洋」により、XCTD及びADCPを用いた十数時間程度の往復観測を行った結果、いずれの観測においても、50m等深度面において、ポテンシャル水温・塩分・ポテンシャル密度の数時間に及ぶ時間的変動が生じており、特に水深80mまでに及ぶ表層混合層が発達していた10月の観測データでは、表層混合層の塩分が鉛直方向に一様に時間変動する様子が確認できた。観測時間の制限から、これらの時間的変動が周期性を持つ振動なのか一時的な変動かは判別できなかったが、同深度の流速と比較すると、ポテンシャル水温・塩分・ポテンシャル密度と南北流速の時間的変動は概ね同様の傾向を示していることが確認できた。
まず、2021年8月に海上保安庁測量船「平洋」により測線上の航行観測を行った結果、性質の異なる水塊 ; 黒潮水と陸棚水が分布していることを見出した。水塊分類の古典的な方法であるクラスター分析を行い、各クラスターの地理的分布とポテンシャル水温、塩分並びに流速分布を比較したところ、陸棚斜面部の水深60-80mにおける陸棚から黒潮水への低塩分水の張り出しと、黒潮から陸棚底層への高塩分水の這い上がりが確認され、これらにより黒潮水と陸棚水の混合が生じていることが示唆された。低塩分水と黒潮水の境界付近については、万田ほか(2001)において二重拡散対流の可能性が示唆されており、本データに対しても不安定の指標として用いられるTurner角を算出したところ、低塩分水の張り出し付近でソルトフィンガーが発生し得る75-85度の値が分布する傾向が見受けられた。また、2022年に陸棚斜面域において、海上保安庁測量船「光洋」により、XCTD及びADCPを用いた十数時間程度の往復観測を行った結果、いずれの観測においても、50m等深度面において、ポテンシャル水温・塩分・ポテンシャル密度の数時間に及ぶ時間的変動が生じており、特に水深80mまでに及ぶ表層混合層が発達していた10月の観測データでは、表層混合層の塩分が鉛直方向に一様に時間変動する様子が確認できた。観測時間の制限から、これらの時間的変動が周期性を持つ振動なのか一時的な変動かは判別できなかったが、同深度の流速と比較すると、ポテンシャル水温・塩分・ポテンシャル密度と南北流速の時間的変動は概ね同様の傾向を示していることが確認できた。