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[AOS17-P09] 東部瀬戸内海播磨灘に出現するカイアシ類の種組成と生物量について
キーワード:瀬戸内海、播磨灘、動物プランクトン、カイアシ類、季節変動
瀬戸内海では1980年代後半から漁獲量の減少が続いているが、その一要因として、栄養塩濃度の低下に伴う一次生産者の減少、これに続き魚類の餌料生物である動物プランクトンも減少している可能性が考えられている。しかし、瀬戸内海において動物プランクトンの詳細な調査観測は2000年代以降行われておらず、漁獲量の減少原因を解明する上で動物プランクトンに関する知見が決定的に不足しているのが現状である。本研究では海洋の二次生産者として重要な役割を担っているカイアシ類について、現在の種組成および生物量を明らかにする目的で、東部瀬戸内海の播磨灘において周年を通した観測を実施した。
播磨灘に一定点(Stn. NH)を設け、2019年4月から2020年3月までは0 m層および10 m層、2020年8月からは20 m層、2021年11月から2022年12月までは30 m層を追加して毎月サンプリングを行った。各水深でバンドーン型採水器により10 Lを採取し、目合い100 μmのプランクトンネットによりカイアシ類を濃縮した。顕微鏡下で成体と亜成体は属レベルまで同定し、ノープリウス幼生は総数を計数することで個体密度(inds. m-3)を算出した。同様に頭胸長についても最大30個体の測定を行い、生物量(mgC m-3)に換算した。
観測の結果、カイアシ類の出現種としてはParacalanus属、Oithona属、Microsetella属が優占する傾向にあった。総個体密度は0.02–6.28 x10⁴ inds. m-3、生物量は0.047–61.6 mgC m-3の範囲にあり、Paracalanus属は周年、Oithona属は春季および冬季、Microsetella属は夏季から秋季に出現した。1970年代末~1980年代当初(Uye et al. 1986)および1990年代前半(Uye and Shimazu 1997)に実施されたカイアシ類の観測結果と本研究の観測結果を比較すると、カイアシ類の総個体密度は1990年代前半に0.83–1.4 x10⁴ inds. m-3であったのに対し、本研究では0.20–1.8 x10⁴ inds. m-3と同程度もしくはやや減少傾向であった。一方で生物量は1970年代末~1980年代当初および1990年代前半は2.4–25 mgC m-3であったのに対し、本研究では1.5–12 mgC m-3と明確な低下傾向にあった。また大型種であるCalanus属の出現頻度が大きく減少していた。以上の結果から、現在の播磨灘におけるカイアシ類の出現傾向として、個体密度は大きく減少していないものの、大型種が減少したことで生物量として減少傾向にあると考えられる。
Reference
Uye, S., Kuwata H. and Endo, T.: Journal of Oceanography, 42, 421–434 (1987)
Uye, S. and Shimazu, T.: Journal of Oceanography, 53, 529–538 (1997)
播磨灘に一定点(Stn. NH)を設け、2019年4月から2020年3月までは0 m層および10 m層、2020年8月からは20 m層、2021年11月から2022年12月までは30 m層を追加して毎月サンプリングを行った。各水深でバンドーン型採水器により10 Lを採取し、目合い100 μmのプランクトンネットによりカイアシ類を濃縮した。顕微鏡下で成体と亜成体は属レベルまで同定し、ノープリウス幼生は総数を計数することで個体密度(inds. m-3)を算出した。同様に頭胸長についても最大30個体の測定を行い、生物量(mgC m-3)に換算した。
観測の結果、カイアシ類の出現種としてはParacalanus属、Oithona属、Microsetella属が優占する傾向にあった。総個体密度は0.02–6.28 x10⁴ inds. m-3、生物量は0.047–61.6 mgC m-3の範囲にあり、Paracalanus属は周年、Oithona属は春季および冬季、Microsetella属は夏季から秋季に出現した。1970年代末~1980年代当初(Uye et al. 1986)および1990年代前半(Uye and Shimazu 1997)に実施されたカイアシ類の観測結果と本研究の観測結果を比較すると、カイアシ類の総個体密度は1990年代前半に0.83–1.4 x10⁴ inds. m-3であったのに対し、本研究では0.20–1.8 x10⁴ inds. m-3と同程度もしくはやや減少傾向であった。一方で生物量は1970年代末~1980年代当初および1990年代前半は2.4–25 mgC m-3であったのに対し、本研究では1.5–12 mgC m-3と明確な低下傾向にあった。また大型種であるCalanus属の出現頻度が大きく減少していた。以上の結果から、現在の播磨灘におけるカイアシ類の出現傾向として、個体密度は大きく減少していないものの、大型種が減少したことで生物量として減少傾向にあると考えられる。
Reference
Uye, S., Kuwata H. and Endo, T.: Journal of Oceanography, 42, 421–434 (1987)
Uye, S. and Shimazu, T.: Journal of Oceanography, 53, 529–538 (1997)