日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-02] 総合的防災教育

2023年5月21日(日) 10:45 〜 12:00 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:林 信太郎宇根 寛中井 仁(小淵沢総合研究施設)、小森 次郎(帝京平成大学)、座長:林 信太郎(秋田大学大学院教育学研究科)、久利 美和(気象庁)、宇根 寛

11:30 〜 11:45

[G02-04] 防災意識と創造性を高める「防災未来道具」に関するブレイン・ストーミング授業

*大石 裕介1,2、伊与原 新、山岡 鉄也1、石井 力重3、高野 和哉1、立井 裕也1、山崎 崇史1、堀之内 一天4、菅原 大助2 (1.富士通株式会社、2.東北大学災害科学国際研究所、3.アイデアプラント、4.平塚市立富士見小学校)

キーワード:防災教育、防災未来道具、小学校/中学校

防災と創造性の啓発を目的として、小中学校で実施した「防災未来道具」に関するブレイン・ストーミングの授業について報告する。防災教育を効果的に推進するうえで重要なのは、子供たちに主体的に防災について考えてもらうことと、災害に関する想像力を高めることであり、これまでにもゲームを取り入れた教材等も広く用いられている。本取組では、子供たちの関心を高める新たな試みとして、「30年後の防災未来道具」について自由に発想するブレイン・ストーミングを取り入れた授業を、2023年の1月と2月に、塩釜市の中学1年生1クラス(約30名)、平塚市の小学5年生5クラス(約170名)、平塚市の小学6年生4クラス(約120名)を対象に実施した。

授業は2コマ構成となっており、1コマ目に全クラスでのブレイン・ストーミング、2コマ目に各クラスに分かれてのアイデアの共有とアイデアへの投票を行った。1コマ目では、導入として、授業のテーマが「30年後の防災未来道具」であることを説明し、多くの現存する技術のきっかけがSF小説であり自由な発想が未来の技術のタネになっていること、漫画やアニメから着想を得てもよいことをメッセージとして伝えた。その後、「避難する」、「救助する」、「避難後に役立つ」といったシーン別でのアイデアの例を紹介した。また、アイデアを出すヒントとして、オズボーンのチェックリストを参考にしたアイデア出しの例を紹介し、「アイデアを批判しない」、「突飛なアイデア、大歓迎」、「ひとのアイデアと組合せて膨らます」をルールとして伝えた。その後、3人組でのアイデア出しを5~8分で、組を変えながらス4回実施した。

2コマ目では、1コマ目に出たアイデアをウェブシステムに各児童・生徒が記入した後、各アイデアへの「いいね」投票を行い、1位のアイデアを決定した。その後、全クラスをウェブ会議システムで接続し、各クラスの1位のアイデアについて発表してもらった。最後に、授業の感想について各クラス内で共有する時間を取った。児童・生徒からは、「未来に向けて考えていくべきだと思った。」「他の子からいろいろなアイデアが出て面白かった。」などの意見が得られ、また、学校の先生からは、「普段答えがある授業が多いが答えのない授業で、普段の勉強と違った子が活躍していてよかった。」「子供たちが引き込まれる授業でよかった。」などの前向きな意見が得られた。

児童・生徒の取組態度は総じて極めて積極的で、実施者側が立ち入ってアイデア出しを誘導しなければならない場面もほとんどなく、授業は終始楽しげな雰囲気で進んだ。防災についての授業は、場合によっては子供の関心が得られないこともあるが、本取組では、未来の道具という子供にとっても興味が沸くテーマを設定することで、子供の関心が得られ主体的な参加が促されたと考えられる。また、どんな未来の道具が有効かを考えるプロセスで、災害時に何が必要なのかも同時に想像し考える機会になっており、災害について想像する力も養われる効果が期待できる。それと併せて、世の中にないもののアイデアを出す経験は、新しいものを生み出す創造性を養う上で有効な機会になった。