日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-02] 総合的防災教育

2023年5月21日(日) 10:45 〜 12:00 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:林 信太郎宇根 寛中井 仁(小淵沢総合研究施設)、小森 次郎(帝京平成大学)、座長:林 信太郎(秋田大学大学院教育学研究科)、久利 美和(気象庁)、宇根 寛

11:45 〜 12:00

[G02-05] コロナ禍における防災~避難生活のあり方の変化に適応していくためのブレインストーミング

*糸谷 夏実1、田原 道崇1 (1.応用地質株式会社)

キーワード:防災教育、在宅避難、ワークショップ、ブレインストーミング、多様性

コロナ禍以前、日本ではムスリム長期在留者が増加していた。在日留学生数は平成30年5月1日時点で29万8900人にのぼり(日本学生支援機構, 2019)、ムスリム留学生は1万人を超えていたと予想される。現代の日本社会において、宗教的マイノリティとしての立場を互いに理解し、文化的宗教的多様性を尊重できる環境を整備していく必要がある。しかしながら、行政の防災対策において、災害時ムスリムがどのような準備や行動・注意をすればよいかまで詳細に議論されていない。
小さなコミュニティでの災害時の行動計画において重要なのは、「密着性」である。多様な価値観の中で「課題の明確化と共有化」をいかにして推進していくかである。本研究では、「課題の明確化と共有化」に着目し、知識の行動化形成過程の構造化を提案する四面会議システム法(YSM)を用いた。この四面会議システム手法は、住民による行動計画づくりのための支援手法の1つとして住民と防災専門家が協働するワークショップで適用されている。本研究では、四面会議システム法を用いて、ムスリムと日本人が協働して、課題テーマを解決する方向性に応用していく。
本研究で適用した四面会議システム手法は、課題テーマに必要なアクション(行動やもの)や準備しておくべきアクション(行動やもの)を4つの面からアプローチして考える。4つの面は、「組織・お金(management)」、「情報(information)」、「人的資源(Soft Logistics)」、「物的資源(Hard Logistics)」で構成される。それぞれ1面ずつ2人(ムスリムと日本人)で担当し、付箋にアクションを出していき、課題テーマに対する解決策を明確化かつ共有していった。
コロナの状況の下で、避難所のあり方が変化している。3密をさけるために、国や多くの自治体は、避難所ではなく、在宅避難を推奨している。この四面会議図の作成により、ムスリムの避難所生活に必要なアクションや物を具体化していくことを目的とし、課題テーマを「ムスリムが在宅避難で必要なものは何か?」と設定した。
コロナ禍前である2019年においても同様なワークショップを実施している。コロナ禍前とコロナ禍における4面会議の結果を比較し、ムスリムの在宅避難における課題と解決策を見出していく。さらにワークショップにDX要素を取り入れるため、テキストリマイニングの活用を試みた。参加者から発言されたキーワードを整理・考察を行い、発言者の傾向やニーズ変化の傾向を明確にしていきたい。
ひとつの課題に向けて、ムスリムと日本人で協働しながら、多様な人々が参加することで、解決アクションの枠が流動的なものとなり、広がり、多様なステークホルダーを巻き込んだ防災・減災を展開することができる。ダイバーシティ&インクルージョンを踏まえた防災・減災を取り入れるために、四面会議システム法は有効な手法であり、現代社会に沿った行動計画を提案できると考えられる。