日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG23] 気候変動への適応とその社会実装

2023年5月22日(月) 15:30 〜 16:45 202 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:山野 博哉(国立環境研究所)、石川 洋一(海洋研究開発機構)、大楽 浩司(筑波大学)、田村 誠(茨城大学地球・地域環境共創機構)、座長:山野 博哉(国立環境研究所)、石川 洋一(海洋研究開発機構)、大楽 浩司(筑波大学)、田村 誠(茨城大学地球・地域環境共創機構)


16:00 〜 16:15

[HCG23-08] 富山県における気候変動の農林業への影響とその適応策

*吉田 尚郁1、ソ ユファン1張 勁2 (1.公益財団法人環日本海環境協力センター、2.富山大学学術研究部理学系)


キーワード:気候変動、稲作、天然林、中山間地域

富山県はその県土面積の80%を農地と森林域が占めている。そのため、気候変動に伴う降水量の変化や気温の上昇は、農作物や森林植生といった本県の農林業に大きな影響を及ぼす恐れがある。農地面積の95%が水田で、米が主要農作物である本県では、気温の上昇により白未熟粒の発生に伴う品質低下がすでに起こっており、田植え時期を遅らせるなどの対策が施されているが、更に気温が上昇した場合の影響の拡大が危惧される。一方、森林域では、森林面積の60%が天然林であり、その内45%はブナが優占する植生である。富山県では平成19年度から導入した「水と緑の森づくり税」を活用し、森林の維持・管理が進められているが、ブナ林は気候変動に伴う気温の上昇により全国的に荒廃が進むことが予想されている。気候変動の農林業への影響を可能な限り低下させるためには、予測される将来の気象条件を踏まえた適応策を施すことが必要である。
 そこで、国立環境研究所が提供する将来の気候予測値(CMIP6をベースにしたCDFDM手法による日本域バイアス補正気候シナリオデータ:NIES2020(Ver.1))を用い、富山県の稲作及び森林植生に及ぼす影響を解析した。その結果、どのシナリオで推移したとしても、平野部での白未熟粒の発生の確率はすでに高まっており、気候変動シナリオSSP5-8.5で予測される2080年には現在のすべての水田域が、現在主流となっているコシヒカリの生産には適さなくなることが明らかとなった。ブナ林の荒廃も進行し、特に中山間地域に分布するブナ林について荒廃の危険性が高まることが示唆された。これら農林業への影響を最低限に抑えるための適応策として、中山間地域の活用が有効であることが分かってきており、適応策として取りまとめを進めている。
 本研究は環境省・(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(JPMEERF20212001)により実施した。