14:30 〜 14:45
[MGI30-04] 月形成円盤の内部構造の粒子数依存性
キーワード:月形成円盤、N体シミュレーション
現在の標準的な月形成シナリオでは、巨大衝突よって撒き散らされた物質が月形成円盤を形成し、その中で集積が進むことで月が形成されたと考えられている。この時、月形成円盤はロッシュ限界内側で高温のガスが冷却・固化することで形成されるため、非常に小さな岩石粒子からなる可能があり、月形成過程が粒子サイズに依存するかどうかの理解は重要になる。最近 Sasaki &Hosono (2018) では1000万粒子まで用いた大規模 N 体シミュレーションにより月形成円盤の進化の研究を行ったが、その中ではまだ分解能の違いによる進化への影響の詳細が十分議論されていない。本研究では、Sasaki & Hosono (2018)と同じ最大1000万粒子まで用いた月形成円盤の力学進化の N 体シミュレーションを行って分解能依存性を調べた。まず、地球半径の1.6倍よりも内側の領域では、よく知られているスパイラル構造ではなくリング状の構造ができること、また、この構造は詳細にみると非常にタイトなリーディングスパイラルであることが明らかになった。この構造は1000万体、100万体のシミュレーションでは明確にみえるが、10万体以下では見えないため、これまでにこのような構造の存在について指摘されてこなかったのではないかと考えられる。土星リングの研究から、B リングでは、viscous overstability と呼ばれるメカニズムで定常なリング構造ができうることが指摘されているが、B リングを対象とした局所シミュレーションの結果と比較し、月形成円盤がリングになるかスパイラルになるかの境界が局所シミュレーションの結果と一致していること、また、Toomre の臨界波長で規格化したリングの間隔もほぼ一致していることを確認した。さらにこの領域の外側への角運動量輸送は、粒子数が増えると明らかに遅くなることがわかった。このように月形成円盤の構造は分解能に依存する。今後さらに大規模なシミュレーションを行い、収束性を確認することが重要になる。