日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] ジオパーク

2023年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (4) (オンラインポスター)

コンビーナ:尾方 隆幸(琉球大学大学院理工学研究科)、大野 希一(鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会事務局)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、青木 賢人(金沢大学地域創造学類)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 17:15-18:45)

15:30 〜 17:00

[MIS11-P02] 八峰白神ジオパークにおける留山地すべりの地学と地生態学的要素

*鄒 青穎1、山岸 洋貴1、蔡 美芳2、川上 礼央奈3 (1.弘前大学農学生命科学部、2.青森大学総合経営学部、3.岩手大学大学院連合農学研究科)

キーワード:地すべり、植物群集、地生態学、地学、ジオパーク

本研究では,八峰町白神ジオパークに位置する留山地すべり地を対象として,地すべり地が持つ地形景観や植生生態について地学や地生態学的な面から明らかにすることを目的とした。本研究では,2.5 mメッシュのAW3D DEMを用いて地すべり地形の抽出と分析を行った。地すべり地における植物群集の地形的位置と種構成の関係を検討するため,地すべり上部斜面(3つのプロット)と地すべり末端部斜面(1つのプロット)において,それぞれ20 m四方の方形区を調査プロットとして設定し,調査プロットに出現する植物について階層ごとにその被度階級を目測で把握する方法で記録した。
地すべりは,標高約250 m以下が滑落したもので,比高40 mの主滑落崖の前面に移動体が広がっている。地すべりは幅350 m,長さ450 mの規模を持ち,水平投影面積は約0.1 km2に及ぶ。主滑落崖は,全体として北西側に開いた馬蹄状の滑落崖を持つ。主滑落崖には,既存の滑落崖が2次的崩壊し形成された隣りあう2つの小規模な滑落崖が認められる。2つの滑落崖の直下には,それぞれに対応した小規模な地すべり移動体が存在する。
地すべり移動体上部斜面での3つの調査プロットにおいて,それぞれ約40~55種の植物が確認されており,その中にはブナ-オオバクロモジ群集(ブナ林)に関係が深い植物種が14~16種生育していた。これに対してサワグルミ-ジュウモンジシダ群集(サワグルミ林)に関係が深い種は2~5種にすぎなかった。一方,地すべり移動体末端部斜面での調査プロットにおいて,70種の植物が確認されており,その中にはブナ林に関係が深い植物種が14種生育していた。一方,サワグルミ林に関係が深い植物種が11種生育していた。調査プロットに分布する植生は,地すべり上部斜面ではブナ林に帰属するものと判断できる。一方,地すべり末端部斜面のプロットでの植生の帰属する群集の判断は難しいが,サワグルミ林に関係が深い種は地すべり上部斜面のプロットと比べより多くの種が生育していた。このような地すべり上部斜面と末端部斜面の地形的環境の差は群集に生育している植物の違いとして表れてきたことを示すと考えられる。