日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] 地球流体力学:地球惑星現象への分野横断的アプローチ

2023年5月23日(火) 13:45 〜 15:00 202 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:伊賀 啓太(東京大学大気海洋研究所)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、柳澤 孝寿(国立研究開発法人海洋研究開発機構 海域地震火山部門)、相木 秀則(名古屋大学)、座長:中島 健介(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

14:45 〜 15:00

[MIS12-05] 縁辺海域ホットスポットが温帯低気圧に与える影響:ロスビー数依存性について

*山本 勝1 (1.九州大学応用力学研究所)

キーワード:縁辺海域ホットスポット、温帯低気圧、ロスビー数

北太平洋西岸の縁辺海で高い海面熱フラックス値をもつ領域は、気候系ホットスポットと呼ばれる(e.g., Nakamura et al. 2015)。このホットスポットに対する大気応答は、地球流体力学の視点から理想化大気大循環モデルで研究されており、「大陸東岸の温度低下や北太平洋域の低気圧活動(Kaspi & Schneider 2011)」や「ホットスポット近傍の二つ玉低気圧と爆弾低気圧の形成(Yamamoto 2021)」について議論されてきた。Yamamoto (2021)では、Held & Suarez (1994)の設定を用いて、全球WRF(Weather Research and Forecasting model)で、理想化実験を行った。北太平洋の縁辺海ホットスポットが下層大気を加熱すると仮定し、局所的な定常加熱を三角柱の領域で与え、この加熱域の位置や厚みを変えた感度実験を行った。この研究によると、ホットスポットが、急激な気圧低下や二つ玉低気圧の出現頻度を増大させることを示した。
本研究では、北太平洋西岸の縁辺海域の局所加熱に対する大気応答(Yamamoto 2021)をロスビー数で整理し、日本付近の二つ玉低気圧や爆弾低気圧の形成条件を明らかにすることを目的とする。惑星半径を変えてロスビー数のみを変化させることで、ジェットの位置や強度を変える実験を行なった。北半球の偏西風ジェットの位置と強さを表す指標として「偏西風ジェットのロスビー数RoNJ」を、ホットスポット下層の力学的相似性を表す指標として「ホットスポット上の下層大気のロスビー数RoHS」を用いて整理した。ホットスポットと偏西風ジェットの相対的な位置を反映して、RoNJ ~ 0.04で急激な気圧低下や南北にのびるトラフの出現頻度が極大になる。ホットスポット上の下層大気に関して、RoHS ~ 0.03あたりでは、同じRoHSであっても、上層のジェットの配置に関連して異なる低気圧活動形態が見られた。これは、ホットスポット近傍のみならず、上層との結合過程が重要であることが示唆される。発表では、二つ玉低気圧と爆弾低気圧の出現の最適条件について議論したい。