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[MIS15-P11] 過去9万年間の気候記録を保存した南大東島石筍コアの初期解析
キーワード:鍾乳石、同位体、石筍
洞窟内で生成する石筍は、U-Th年代測定法によって生成年代を正確に求め、安定同位体比等のプロキシと組み合わせることで気候変動を復元することができる。とくに、石筍の酸素安定同位体比(δ18O)は降水量や気温のプロキシとして最もよく用いられている。しかし、連続した長期のδ18Oデータを得るには多数の石筍を採取する必要があり、運搬面や景観面等で課題がある。そこで、我々のグループでは沖縄県南大東島の山下洞にて、大型の石筍の中心部分をボーリング掘削して石筍コアを採取した。本発表では、この石筍コアのうち2試料の分析結果を報告する。採取した石筍コアは前処理(研磨、切断、ミリング)を行った後、δ18O(およびδ13C)を測定した。また、17層のU-Th年代測定を行った。年代測定の結果、石筍コアの成長期間は12.5 kyr BP(千年前)から91.1 kyr BPであることが明らかになった。年代測定の誤差は4–6万年の範囲において±257年だった。これは、高精度に年代決定されている中国Hulu Caveの年代推定誤差と同等であり、最高レベルの年代決定が可能であることを示している。2つの石筍コアのδ18Oの変動パターンは、重複期間、42–85 kyr BPにおいて、年代の誤差範囲内で整合的であった。発表では、U-Th年代の測定点が多く、信頼できる気候データが得られた一部の期間を中心に議論する。