日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ39] 地球科学の科学史・科学哲学・科学技術社会論

2023年5月21日(日) 15:30 〜 16:45 202 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:矢島 道子(東京都立大学)、青木 滋之(中央大学文学部)、山田 俊弘(大正大学)、山本 哲、座長:矢島 道子(東京都立大学)、山田 俊弘(大正大学)、山本 哲青木 滋之(中央大学文学部)

16:30 〜 16:45

[MZZ39-05] 明治期の日本における災害史料集の編纂過程の一事例—小鹿島果 編『日本災異志』(1893年)の未定稿—

*服部 健太郎1 (1.関西大学)

キーワード:災害史料集、明治期の日本、小鹿島果、日本災異志

明治期に刊行され,現在も使用されている災害史料集として1893年の『日本災異志』が挙げられる.著者の小鹿島果(1857-1892)は,古代から近世に至る史料を検討し,内容の面から (1)飢饉,(2)大風,(3)火災,(4)旱魃,(5)霖雨,(6)洪水,(7)疫癘,(8) 噴火,(9)地震,(10)海嘯,(11)虫害,(12)彗星の12項目に分けた.それぞれ編年体の記事を作成し,出典を明示し,『日本災異志』とした.そのうち,武者金吉による『増訂大日本地震史料』全3巻(文部省震災予防評議会 1941-1943)に引用されたものもある.さらには,『理科年表』(最新版は2023年版)の「日本付近のおもな被害地震年代表」や『日本被害地震総覧 599-2012』(宇佐美・他,2013)といった,現代の地震カタログにも影響を及ぼしている.

『日本災異志』の編纂過程に関して,検討の余地がある.今回,総務省統計図書館に所蔵されている,『日本災異志』の編纂に関係する記録類に注目する.地震の項目を除いた『日本災異志』の未定稿が所蔵されている.他には,未定稿の作成に利用されたと推定される写本類も存在している.

本発表では,海嘯の項目に関する『日本災異志』未定稿と写本『本朝地震考』に注目する.『本朝地震考』から『日本災異志』への引用過程の検討を通じて,『日本災異志』の編纂過程について考察する.