14:45 〜 15:00
[MZZ42-05] 釧路市春採湖のコアリング調査にあわせた研究および普及・教育の企画と実践
キーワード:津波堆積物、春採湖、北海道太平洋岸、教育普及活動、ラグーン堆積物
2022年(令和4年)8月1-14日,北海道の釧路市教育委員会や釧路市立博物館のサポートにより科研費基盤研究(A) 21H04523を用いた春採湖のコアリング調査が実施された.春採湖で採取されたコア日程の中日である2022年(令和4年)8月7日(日)午後に,科研費調査のホストである釧路市立博物館主催で,春採湖ジオツアーが実施された.あわせて採取されたコアは剥ぎ取りを作成し、釧路市立博物館において研究者がどのようにして研究を進めれているのかを紹介する展示を行っている.本発表では博物館と連携した研究活動にあわせた普及・教育の企画と実践の概要を報告する.
今回のジオツアーでは,釧路市民の憩いの場となっている春採湖に焦点を当て,3つのジオのテーマを堅持して企画の検討を行った.
(1)春採湖周辺の地形・地質と地すべり災害
春採湖の湖畔の遊歩道沿いにおいて観察できる4000万年前の地層(浦幌層群),12.5万年前の海成段丘や地すべりなどの地形について解説する.浦幌層群は北海道を代表する夾炭層であり,春採湖に近接する太平洋炭砿は地元の重要な基幹産業として釧路市の経済を長年支えてきたことを述べる.一方,根釧海岸地域は地すべり地帯であることが知られており,住民の知っておくべき情報について解りやすく述べる.
(2)春採湖の成り立ち
春採湖は最終氷期に形成された開析谷の形状が保存されている海跡湖である.過去1万年間において,縄文海進によってエスチュアリー→内湾→ラグーンへと環境が変化してきたことを述べる.また,現在の汽水環境においては,満潮時に春採川河口から海水が流入し,淡水層(表層)と塩水層(深層)の2層構造を成している.そのため年縞ラミナが形成されている貴重な湖であることを述べる.マッケラス式ピストンコアラーを用いた採泥を実演する.
(3)湖底に潜む巨大津波の痕跡
春採湖には千島海溝で発生した過去1万年間の地震津波履歴を保持している可能性が高いとの研究成果が既に報告されている.このジオツアーにおいては,科研費調査で得られたコア試料を用いて年縞ラミナと津波堆積物を現地で解説する.
コロナ禍でのイベント開催ということで,ジオツアーの参加申し込みは,7月22日(金)から,webまたは電話にて,先着順30名まで受け付けていたが,その後,釧路市内の理科教員の参加希望などもあり,最終的には予定よりやや多めの37名の参加者となった.参加者の多くは想定通り釧路市内や近隣の住民であったが,中にはこのジオツアー参加のためにわざわざ東京方面から来釧された方もおられたとお聞きしている.
8月7日(日)は天候に恵まれた.予定通り,午後1:30に釧路市立博物館に集合し,春採湖畔を経て春採川河口までの2.5 kmのルートを2時間30分かけて歩いた.特に大きなトラブルも発生せず,無事に終了することができた.
ジオツアー参加の感想について詳しく参加者から聞くことは出来なかったが,今回のジオツアーを題材に後日千代の浦の露頭を中心に、6年生の理科授業「大地のつくりと変化」で現地を訪問するなど、総じて高評価を得られたと考えている.
このジオツアーの企画は,科研費基盤研究(A) 21H04523ならびに科研費基盤研究(C)22K03744のアウトリーチ活動の一環として実施された.ご協力頂いた産総研の小田啓邦博士,島根大学エスチュアリー研究センターの香月興太博士,ふじのくに地球環境史ミュージアムの中西利典博士,明治コンサルタント(株)ならびに関係者の皆さまに深く感謝申し上げる次第である.
今回のジオツアーでは,釧路市民の憩いの場となっている春採湖に焦点を当て,3つのジオのテーマを堅持して企画の検討を行った.
(1)春採湖周辺の地形・地質と地すべり災害
春採湖の湖畔の遊歩道沿いにおいて観察できる4000万年前の地層(浦幌層群),12.5万年前の海成段丘や地すべりなどの地形について解説する.浦幌層群は北海道を代表する夾炭層であり,春採湖に近接する太平洋炭砿は地元の重要な基幹産業として釧路市の経済を長年支えてきたことを述べる.一方,根釧海岸地域は地すべり地帯であることが知られており,住民の知っておくべき情報について解りやすく述べる.
(2)春採湖の成り立ち
春採湖は最終氷期に形成された開析谷の形状が保存されている海跡湖である.過去1万年間において,縄文海進によってエスチュアリー→内湾→ラグーンへと環境が変化してきたことを述べる.また,現在の汽水環境においては,満潮時に春採川河口から海水が流入し,淡水層(表層)と塩水層(深層)の2層構造を成している.そのため年縞ラミナが形成されている貴重な湖であることを述べる.マッケラス式ピストンコアラーを用いた採泥を実演する.
(3)湖底に潜む巨大津波の痕跡
春採湖には千島海溝で発生した過去1万年間の地震津波履歴を保持している可能性が高いとの研究成果が既に報告されている.このジオツアーにおいては,科研費調査で得られたコア試料を用いて年縞ラミナと津波堆積物を現地で解説する.
コロナ禍でのイベント開催ということで,ジオツアーの参加申し込みは,7月22日(金)から,webまたは電話にて,先着順30名まで受け付けていたが,その後,釧路市内の理科教員の参加希望などもあり,最終的には予定よりやや多めの37名の参加者となった.参加者の多くは想定通り釧路市内や近隣の住民であったが,中にはこのジオツアー参加のためにわざわざ東京方面から来釧された方もおられたとお聞きしている.
8月7日(日)は天候に恵まれた.予定通り,午後1:30に釧路市立博物館に集合し,春採湖畔を経て春採川河口までの2.5 kmのルートを2時間30分かけて歩いた.特に大きなトラブルも発生せず,無事に終了することができた.
ジオツアー参加の感想について詳しく参加者から聞くことは出来なかったが,今回のジオツアーを題材に後日千代の浦の露頭を中心に、6年生の理科授業「大地のつくりと変化」で現地を訪問するなど、総じて高評価を得られたと考えている.
このジオツアーの企画は,科研費基盤研究(A) 21H04523ならびに科研費基盤研究(C)22K03744のアウトリーチ活動の一環として実施された.ご協力頂いた産総研の小田啓邦博士,島根大学エスチュアリー研究センターの香月興太博士,ふじのくに地球環境史ミュージアムの中西利典博士,明治コンサルタント(株)ならびに関係者の皆さまに深く感謝申し上げる次第である.