日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ45] プラネタリーディフェンス、我々は何をすべきか

2023年5月23日(火) 15:30 〜 16:45 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:吉川 真(宇宙航空研究開発機構)、Patrick Michel(Universite Cote D Azur Observatoire De La Cote D Azur CNRS Laboratoire Lagrange)、奥村 真一郎(NPO法人日本スペースガード協会)、岡田 達明(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、座長:奥村 真一郎(NPO法人日本スペースガード協会)

15:30 〜 15:45

[MZZ45-07] チェラビンスク隕石による自然災害から10年

*髙橋 典嗣1吉川 真2 (1.武蔵野大学、2.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:小惑星、チェラビンスク隕石、自然災害

2013年2月15日、太陽方向から接近した推定直径17m、質量1万トンの小惑星が秒速18.9km/sで大気圏に突入し、チェラビンスク州の上空29kmで爆発した。爆発地点から西北西に70km離れたチェバルクリ湖にかけて砕けた隕石が落下したが、落下隕石による被害は殆どなかった。しかし、爆発地点から50Kmの範囲で建物被害と負傷者が多数でるなど、隕石落下に伴う自然災害となった。

 現地調査では、衝撃波による被害状況の視察、落下隕石の経路の導出と落下隕石の収集を行った。衝撃波による被害状況では、衝撃波到達の瞬間の様子を捉えた南ウラル大学の校舎内の防犯カメラ、駐車場の監視カメラの映像及び衝撃波の音声などを収集した。また建物の被害と衝撃波の飛来方向と構造物の面との関係を示す資料などを得た。

 隕石の収集では、チェバルクリ湖(2個)、エマンジェリンカ(2個)、デプタツキー(19個)の3地点、合計23個のチェビンスク隕石を収集した。爆発地点の直下に近いデプタツキーでの落下当時の状況を聞くことができた。落下直後の雪原には無数の小さな黒い隕石が散布されていて、雪上に空いた穴からは、雪面から60 cm掘った雪床に3 cmほどの隕石が取り出せたとのことである。ミアス(Miacc)市の自然史博物館が、ここで大規模な隕石の採取を行っていた。これらの隕石は、チェリャビンスク大学のドウドロフ(Alexandr Dudorov)氏、南ウラル連邦大学のグロフォスキー氏らの分析結果によると、カンラン石(27.9±0.35 mol%),輝石(22.8±0.8 mol%),鉄・ニッケル・イルメナイトなどの金属(10 w%)からなり,形成年代は原始微惑星起源で45億7000万年、数千万年前に形成された衝撃変成がったとの説明を受けた。その後、チェバルクリ湖の湖底から570kgの隕石破片が引き上げられた。

 それから10年、小惑星衝突が引き起こす自然災害の視点で、チェラビンスク隕石を再レビューしてみることにする。