[O-02] 博士の生活をのぞいてみよう！【中高生向けセッション】

[O02-P07] 私は今、博士持ちイラストレーターを生業としている

★招待講演

*安部 豊

キーワード：イラスト、サイエンスイラスト、博士のキャリア

私は今、博士持ちのイラストレーターを生業としている。本発表では、私のイラストレーターとしての仕事内容を中心に、キャリア形成のありかたなどを紹介する。

どのように博士持ちのイラストレーターになったかを、略歴で簡単に紹介する。筑波大学で水文学、地形学に魅了され、乾燥地の水資源問題に資する研究を志す。筑波大大学院にてモンゴル ヘルレン川流域の地下水流動と河川水との交流関係についての同位体水文学研究で修士を取得。環境コンサルタント会社に約3年勤務した後に退社し、筑波大学の博士課程で中国 北西部 黒河流域の地下水流動に関する同位体水文学研究で博士（環境学）を取得。任期付きポスドク研究員として大学・研究機関（筑波大、地球研）や民間企業（サントリー水科学研）、自治体（神奈川県）において、同位体水文学や森林整備による水循環の影響に関する学術研究に従事。2021年、自らのキャリア形成と、家族、健康もろもろの事情から、これまで趣味として続けてきたイラストでフリーの企業活動を開始。

具体的には、イラストを描いてほしいという依頼に対して希望のイラストを作成したり、自分の発想で自由に描いた作品を売ったり、それをもとにしたイラスト集やポストカードなどグッズを売ったりしている。依頼イラストは多岐にわたる。大学研究室の研究内容を一目で紹介できるイラスト（弘前大 若狭幸先生のWeb Page）、生物多様性の取組みを流域図にわかりやすく表現したイラスト、科研費申請用のコンセプト図、カーボンニュートラルの体系図、書籍の表紙や挿し絵、ペット（主にネコ）をモチーフにしたイラスト、推しアーティストにプレゼントするためのイラスト、家の構造を俯瞰的に表現したイラストなどなど。また、自分の自由な発想の作品でも、地球科学的要素を入れたり、玄武岩の柱状節理が美しい浄蓮の滝をモチーフにしたり、対照流域法や水循環を芸術として昇華したり、自分しかできないアートを模索している。

個人事業は企画、営業、交渉、技術的作業、会計など全ての行程を自分でやるしかない苦労や生活と稼ぎのバランスを絶えず考えているため、就労というより生業という言葉が合っているかもしれない。生活を編むような感覚を実感しながら、日々試行錯誤している。