日本地球惑星科学連合2023年大会

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現地ポスター発表

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[O-06] 高校生ポスター発表

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 現地ポスター会場 (幕張メッセ展示ホール8)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 13:45-15:15)

13:45 〜 15:15

[O06-P09] 冬季スプライトの形状と気象条件の関係

*宇都宮 櫂1、*馬淵 彩花1、*𠮷田 和佳奈1 (1. 磐田南高等学校)

キーワード:スプライト、雷、気象条件


TLEs(高高度発光現象)の一種であるスプライトは冬季(11月~3月)に日本海付近で多く発生し,様々な形状があることが知られている.そこで私たちは気象条件による形状の違いを調べるために2019年11月16日から2022年2月27日までに本校から観測された185イベント,190のスプライトのデータを用いて,スプライトの形状と気象条件の関係を解明することにした.
 方法は高感度CCDカメラで撮影されたスプライトを動体検知ソフトで検出し,カメラの視野角を元にスプライトの発生地点を特定する.次にスプライトを形状によって図1のようにColumn(柱状), Angel(天使の羽のような部分を持つ), Carrot(人参の髭のような部分を持つ), Wishbone Tree(枝分かれ部分を持つ)の4種類に分類する.さらに発生地点の気象条件,発生時の赤外雲画像や雨雲レーダー画像を用いて,スプライトの形状と気象条件の関係について解析する.
 この結果,図2よりColumnの発生件数が全体の約7割を占めていること,図3より,Wishbone Treeスプライトは約8割が寒冷前線や20mm/h以上の降水量を伴うことから,活発な雷雲の場合はWishbone Treeのスプライトが発生しやすいこと,AngelとWishbone Treeの発生条件が近似していること,図4よりWishbone Tree発生時は500hPaにおける湿度が高い傾向があること,スプライト発生時は共通して広がった形状の薄い雲が多く見られることが判明した.また,気象条件をもとにした積乱雲の発達度合いより積乱雲の電気エネルギーの形状ごとの大小を推定し,発生に必要な電気エネルギーはColumn, Carrot, Angel, Wishbone Treeの順に大きいことが考えられる.そして,スプライト発生時の雲は冬季の偏西風蛇行が激しく気圧の谷が大きくなった際に生じた切離低気圧による対流不安定によるものであると考えられる.
 以上より,冬季スプライトは種類によって発生に必要な電気エネルギーが異なり,雷雲の持つ電気エネルギーによって形状が左右されることが分かった.冬季スプライトの発生モデルは気圧の谷の発達や上層と下層の温度差によって大気が不安定になることで寒冷前線や雷雲が発生し雷雲内で絶縁破壊が起こり,スプライトが発生する.この際,雲が持つ電気エネルギーや上空の湿度や塵によってスプライトの形状が決定される.
今後の課題は,雲の持つ電気エネルギーの大きさと形状の関連を詳しく調べるとともに,具体的な数値を用いた冬季スプライトの発生モデルを構築し,スプライトの発生メカニズムの完全解明である.