日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] 惑星科学

2023年5月22日(月) 13:45 〜 15:00 展示場特設会場 (3) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:金丸 仁明(東京大学)、荒川 創太(海洋研究開発機構)、座長:荒川 創太(海洋研究開発機構)、鈴木 雄大(東京大学)

14:15 〜 14:30

[PPS07-13] MESSENGER X線分光計による主成分元素比データの多変量解析を用いた水星表面化学組成ユニットの同定

*平田 佳織1,2臼井 寛裕2 (1.東京大学、2.JAXA 宇宙科学研究所)


キーワード:水星、化学組成、多変量解析

水星では、地球や金星よりも相対的に高い揮発性元素存在度が確認されている[Peplowski et al. 2012]。これは、惑星形成後に数多くの天体衝突により表面物質の更新が起こったこと、その影響を揮発性元素存在度が敏感に反映していることを示唆する[Hyodo et al. 2017]。水星表面には、形成直後の惑星を構成し火成活動により再度表面にもたらされた内部物質と、後期集積により供給された衝突天体由来の外部物質が偏在的に分布していると考えられる[e.g., Denevi et al. 2013]。そのため、化学組成データを、火成活動や天体衝突の履歴を反映した地質的背景と詳細に比較することが重要である。しかし、NASAのMESSENGERミッションで得られた化学組成データを用いた詳細な議論は未だなされていない。元素によって観測手法・装置が異なり、観測領域や観測誤差が異なるため複数の元素組成を比較することが難しく、さらに、地質データとは空間解像度が大きく異なるためである[e.g., Peplowski et al. 2012; Nittler et al. 2020]。そこで、本研究ではまず多次元化学組成データによるユニット分類を決定することを目的とした。
MESSENGER探査機搭載のX線分光計XRSにより取得された主成分元素(Mg/Si比、Al/Si 比、S/Si 比、Ca/Si 比、Fe/Si 比)の元素比データを用いてクラスター解析と主成分解析を行った。得られたクラスター境界がMg/Si比の等高線に沿っていること、また、第一主成分(PC1)におけるMg/Si比の係数が極めて大きいことから、Mg/Si比が水星表面の化学組成不均質を特徴づける支配的な指標であることが分かった。
クラスター解析によって得られた3つ以上のクラスターの代表組成を比較したところ、2つの端成分の線形混合のみによって説明することはできなかった。2つの端成分物質の混合ではなく3種類以上の異なる岩相を区別できる可能性があると言える。
また、表面組成不均質を特徴づけると示唆されたMg/Si比の空間分布と、表面形成年代を反映するクレーター個数密度の空間分布を比較したところ、正の相関が見られた。Mg/Si比に代表される表面組成の多様性は火山性噴出物の化学組成、さらにはマントル部分溶融度の時間変化を反映している可能性がある。