10:45 〜 12:15
[PPS07-P04] 土星リング粒子を模擬した多孔質氷球の低速度衝突実験:反発係数に対する空隙率依存性及び非弾性衝突メカニズム
キーワード:土星リング、反発係数、多孔質氷
はじめに:土星リングシステムは太陽系に存在する特徴的な構造の1つであり,非常に薄い円盤状の構造である.メインリングを構成するリング粒子は数 cmから数十mサイズであり,主に水氷から構成されている.更に,惑星探査機Cassiniによって行われた観測によって,動力学的に安定な状態にあることがわかっている.定常状態におけるリング粒子の速度分散は反発係数によって決定されるため,リングの観測結果と数値計算を比較し,リングの動力学を理解するためには,リング粒子の非弾性衝突を特徴付ける反発係数を調べることが非常に重要である.近年の観測によって,メインリングを構成するリング粒子は空隙を含む多孔質氷である可能性が示唆されている.しかし,多孔質氷を用いた低速度での反発係数の実測はほとんど行われておらず,特に多孔質氷の空隙率に着目した実験は今までに行われていない.従って,本研究ではリングの動力学を理解するために重要な物理量であるリング粒子の反発係数を明らかにするため,リング粒子の候補として新たに提案されている多孔質氷を使用した低速度衝突実験及び反発係数の測定を行い,反発係数と衝突速度の関係に対する空隙率依存性を調べた.
実験方法:本研究では多孔質氷球を多孔質氷板へ自由落下させて衝突実験を行い,反発係数を測定した.多孔質氷球(半径Rp = 1.5 cm,空隙率Φ = 49.6, 53.8, 60.8%)は氷粒子(平均粒径 11.3 μm)を球形に押し固めて作成した.多孔質氷板(半径Rt = 1.5 cm,高さHt = 2 cm の円盤状,Φ = 40.9-60.8%)も多孔質氷球と同様に作成した.反発係数は衝突の時間間隔を測定することで求めた.衝突速度範囲は0.93-96.9 cm/sであった.
実験結果と議論:多孔質氷球の衝突速度viと反発係数εの関係は限界速度vcを境に準弾性領域と非弾性領域に分けられることがわかった.準弾性領域(vi < vc)ではvi によらずεが一定値εqeとなった.非弾性領域(vi > vc)ではviの増加に伴ってεは減少し,その関係は塑性変形によるエネルギー散逸を考慮したAndrews’ modelによって表すことができた.本研究では,得られた結果を説明するためにAndrews’ modelにεqeを導入することで以下のようにAndrews’ modelを改良した.
ε = εqe (vi < vc)
ε = εqe[-(2/3)(vc/vi)2+{(10/3)(vc/vi)2-(5/9)(vc/vi)4}1/2]1/2 (vi > vc)
実験結果から,多孔質氷のεはΦの増加に伴って低下することが分かった.これは,塑性変形する体積が増加する効果と準弾性領域でのエネルギー散逸の効率が,空隙率の増加に伴って増加するためであると考えられる.今回得られた実験結果を元にviとεの関係に対する空隙率依存性について考察した.vcの空隙率依存性は,先行研究によって得られた空隙のない氷同士の衝突における限界速度vc,0を導入し,実験結果のフィッティングを行うことで導出することができた(vc = vc,0f q1,q1:定数).εqeはDilleyによって提案された粘性散逸モデルを適用すると,パラメータξに支配されることが分かった(εqe = exp{-πξ/(1-ξ2)1/2}).ξの空隙率依存性は,先行研究によって得られた空隙のない氷同士の衝突におけるεqeから計算したξ0を導入し,実験結果のフィッティングを行うことで導出することができた(ξ = ξ0f q2,q2:定数).最後に,Rp = 1.5 cmの多孔質氷球と十分に大きい多孔質氷球との衝突を考慮して空隙率依存性を外挿し,リングシステムが定常状態になる条件の最小値であるεcritとの比較を行なった.その結果,Φ = 50-70%の多孔質氷球同士の衝突の場合は全てのviでメインリングの定常状態を達成することができたが,Φ < 40%の場合はvi > 20-100 cm/sの場合のみ定常状態を達成することが分かった.
実験方法:本研究では多孔質氷球を多孔質氷板へ自由落下させて衝突実験を行い,反発係数を測定した.多孔質氷球(半径Rp = 1.5 cm,空隙率Φ = 49.6, 53.8, 60.8%)は氷粒子(平均粒径 11.3 μm)を球形に押し固めて作成した.多孔質氷板(半径Rt = 1.5 cm,高さHt = 2 cm の円盤状,Φ = 40.9-60.8%)も多孔質氷球と同様に作成した.反発係数は衝突の時間間隔を測定することで求めた.衝突速度範囲は0.93-96.9 cm/sであった.
実験結果と議論:多孔質氷球の衝突速度viと反発係数εの関係は限界速度vcを境に準弾性領域と非弾性領域に分けられることがわかった.準弾性領域(vi < vc)ではvi によらずεが一定値εqeとなった.非弾性領域(vi > vc)ではviの増加に伴ってεは減少し,その関係は塑性変形によるエネルギー散逸を考慮したAndrews’ modelによって表すことができた.本研究では,得られた結果を説明するためにAndrews’ modelにεqeを導入することで以下のようにAndrews’ modelを改良した.
ε = εqe (vi < vc)
ε = εqe[-(2/3)(vc/vi)2+{(10/3)(vc/vi)2-(5/9)(vc/vi)4}1/2]1/2 (vi > vc)
実験結果から,多孔質氷のεはΦの増加に伴って低下することが分かった.これは,塑性変形する体積が増加する効果と準弾性領域でのエネルギー散逸の効率が,空隙率の増加に伴って増加するためであると考えられる.今回得られた実験結果を元にviとεの関係に対する空隙率依存性について考察した.vcの空隙率依存性は,先行研究によって得られた空隙のない氷同士の衝突における限界速度vc,0を導入し,実験結果のフィッティングを行うことで導出することができた(vc = vc,0f q1,q1:定数).εqeはDilleyによって提案された粘性散逸モデルを適用すると,パラメータξに支配されることが分かった(εqe = exp{-πξ/(1-ξ2)1/2}).ξの空隙率依存性は,先行研究によって得られた空隙のない氷同士の衝突におけるεqeから計算したξ0を導入し,実験結果のフィッティングを行うことで導出することができた(ξ = ξ0f q2,q2:定数).最後に,Rp = 1.5 cmの多孔質氷球と十分に大きい多孔質氷球との衝突を考慮して空隙率依存性を外挿し,リングシステムが定常状態になる条件の最小値であるεcritとの比較を行なった.その結果,Φ = 50-70%の多孔質氷球同士の衝突の場合は全てのviでメインリングの定常状態を達成することができたが,Φ < 40%の場合はvi > 20-100 cm/sの場合のみ定常状態を達成することが分かった.