10:45 〜 12:15
[PPS07-P06] ダスト層の低速度衝突圧密実験
キーワード:圧密、ダスト、微惑星
ダスト集合体である微惑星は多孔質と考えられており、微惑星のなごりとされる小惑星も多孔質なものが多い。小惑星の一部は隕石として地球に飛来しており、これらの隕石は空隙率が測定されている。ただし、微惑星集積時にダスト集合体が自己重力だけでCIコンドライトやCMコンドライトの空隙率まで圧密されることは難しく[1]、十分な圧密のためには熱進化や外部からの力などの自己重力以外の要因が必要であると考えられる。ダスト粒子は衝突付着成長によってフラクタルな集合体を形成し、質量と衝突速度が増加するにつれて、衝突時に圧密や破砕をともなってより高密度な構造へと変化する。そのため、自己重力以外の圧密の要因として、衝突に着目した。本研究では、地球重力下での自由落下弾丸によるダスト層の低速度衝突圧密実験を行い、X線透過画像によって圧密最中の瞬間を観察・解析した。
実験試料として不定形シリカ粒子(中心粒径1.5 µm、真密度 2.2 g/cm3)をアクリル容器(内径 7.4 ㎝, 高さ 20 ㎝)にすりきり一杯充填した。弾丸として直径 3 ㎝の鉄球、鉄円柱(短)(高さ 3 ㎝)、鉄円柱(長)(高さ5㎝)、また、直径 1.5 ㎝の鉄円柱(小)(高さ 5 ㎝)を用い、試料に向けて高さ1 mからアクリル管内を自由落下させた。レーザーと光センサーによって弾丸の通過を検知し、それをトリガーとしてフラッシュX線照射装置を作動させ、粒子が圧密されている最中をイメージングプレートに撮影した。大気圧は 10⁵ Paと 3 Paで実験した。
弾丸衝突からの経過時間と貫入深度の関係は、ニュートン抵抗力が作用し摩擦力が作用しない場合での計算値が実験結果に最も良くフィットした。粒子の圧密状況については、弾丸直下の領域の平均空隙率は鉄円柱(短)では圧密前 0.83 から圧密後 0.70±0.04 まで、鉄円柱(長)では圧密前0.84 から圧密後 0.71±0.04 まで減少していた。また、 圧密速度 10 µm/sにおけるシリカ粒子の圧密実験[1]での圧力と空隙率の関係を用いて推定される空隙率の範囲を導出し、実験結果と比較した。鉄円柱(短)と鉄円柱(長)でそれぞれ 0.70 ~ 0.74, 0.68 ~ 0.71 であり、実験での圧密後の平均空隙率および標準偏差の範囲内に収まっていた。このことから、シリカ粒子の圧密は圧密速度が10 µm/s と数m/s では同様と考えられる。
実験での圧密後の平均空隙率が、摩擦力が作用しないと仮定した場合での推定空隙率と調和的である理由を考察する。今回の実験のシリカ粒子の初期空隙率(0.83)は粉体への貫入則が示された先行研究[2]で用いられた試料の初期空隙率(0.410±0.004)よりも大幅に高い。そのため、圧縮された部分の粒子が周囲の粒子の空隙を充填するように動いて圧密し、粒子自体は摩擦が影響するほど大きく移動していない(流れを生じない)と考えられる。圧縮速度10 µm/s から数m/s の範囲では時間当たりの圧力変化が異なるが、粒子が破壊されるほどの圧力までは達していないため、圧縮による粒子の移動によってのみ空隙を充填し、同様の圧密度合いを示すと考えられる。
本研究は, JAXA宇宙科学研究所の超高速度衝突実験施設の共同利用実験として行いました。
[1] Omura, T. and Nakamura, A.M., 2021, The Planetary Science Journal 2, 41. [2] Katsuragi, H. and Durian, D.J., 2013, Physical Review E 87, 052208.
実験試料として不定形シリカ粒子(中心粒径1.5 µm、真密度 2.2 g/cm3)をアクリル容器(内径 7.4 ㎝, 高さ 20 ㎝)にすりきり一杯充填した。弾丸として直径 3 ㎝の鉄球、鉄円柱(短)(高さ 3 ㎝)、鉄円柱(長)(高さ5㎝)、また、直径 1.5 ㎝の鉄円柱(小)(高さ 5 ㎝)を用い、試料に向けて高さ1 mからアクリル管内を自由落下させた。レーザーと光センサーによって弾丸の通過を検知し、それをトリガーとしてフラッシュX線照射装置を作動させ、粒子が圧密されている最中をイメージングプレートに撮影した。大気圧は 10⁵ Paと 3 Paで実験した。
弾丸衝突からの経過時間と貫入深度の関係は、ニュートン抵抗力が作用し摩擦力が作用しない場合での計算値が実験結果に最も良くフィットした。粒子の圧密状況については、弾丸直下の領域の平均空隙率は鉄円柱(短)では圧密前 0.83 から圧密後 0.70±0.04 まで、鉄円柱(長)では圧密前0.84 から圧密後 0.71±0.04 まで減少していた。また、 圧密速度 10 µm/sにおけるシリカ粒子の圧密実験[1]での圧力と空隙率の関係を用いて推定される空隙率の範囲を導出し、実験結果と比較した。鉄円柱(短)と鉄円柱(長)でそれぞれ 0.70 ~ 0.74, 0.68 ~ 0.71 であり、実験での圧密後の平均空隙率および標準偏差の範囲内に収まっていた。このことから、シリカ粒子の圧密は圧密速度が10 µm/s と数m/s では同様と考えられる。
実験での圧密後の平均空隙率が、摩擦力が作用しないと仮定した場合での推定空隙率と調和的である理由を考察する。今回の実験のシリカ粒子の初期空隙率(0.83)は粉体への貫入則が示された先行研究[2]で用いられた試料の初期空隙率(0.410±0.004)よりも大幅に高い。そのため、圧縮された部分の粒子が周囲の粒子の空隙を充填するように動いて圧密し、粒子自体は摩擦が影響するほど大きく移動していない(流れを生じない)と考えられる。圧縮速度10 µm/s から数m/s の範囲では時間当たりの圧力変化が異なるが、粒子が破壊されるほどの圧力までは達していないため、圧縮による粒子の移動によってのみ空隙を充填し、同様の圧密度合いを示すと考えられる。
本研究は, JAXA宇宙科学研究所の超高速度衝突実験施設の共同利用実験として行いました。
[1] Omura, T. and Nakamura, A.M., 2021, The Planetary Science Journal 2, 41. [2] Katsuragi, H. and Durian, D.J., 2013, Physical Review E 87, 052208.