日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM14] Electric, magnetic and electromagnetic survey technologies and scientific achievements

2023年5月24日(水) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (4) (オンラインポスター)

コンビーナ:馬場 聖至(東京大学地震研究所)、後藤 忠徳(兵庫県立大学大学院理学研究科)、Yuguo Li(Ocean University of China)、Wiebke Heise(GNS Science, PO Box 30368, Lower Hutt, New Zealand)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/23 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[SEM14-P19] 1997年鹿児島県北西部地震震源域における広帯域MTデータの1次元解析

*松永 佳大1相澤 広記2小川 大輝3宇津木 充4吉村 令慧5山崎 健一5、内田 和也2 (1.九州大学大学院 理学府 地球惑星科学専攻、2.九州大学大学院理学研究院付属・地震火山観測研究センター、3.日本原子力研究開発機構・東濃地科学センター、4.京都大学大学院理学研究科附属・地球熱学研究施設火山研究センター、5.京都大学防災研究所)

キーワード: magnetotelluric、1997年鹿児島県北西部地震、比抵抗構造

1997年に発生した鹿児島県北西部地震では、3月26日にM6.5、5月13日にM6.3の地震が発生し、東西方向と南北方向に延びるF字型の余震域を形成した。この地震では、興味深い現象が数多くみられた。まず、付近に活断層がないのにM6クラスの地震が立て続けに発生したことや、2回の大地震によってF字型の余震域が形成されたことが特徴的である (e.g., Takenaka et al. 2008)。また、5月13日の地震については、地震発生の約1週間後から震源域西側において地震が多発した点や、東西方向への破壊が、3月の地震から予想される応力変化では期待できない点(角田 2001)、西側への地震の破壊が進まなかった点 (Horikawa 2001) が挙げられる。これらの不思議な現象には、震源域の地下構造が関係している可能性がある。震源域周辺で過去に行われた広帯域MT調査からは、震源域近傍に低比抵抗帯がイメージングされ、地震破壊に深部起源の流体が影響していることが示唆された (Umeda et al. 2014)。より広域の調査からは、マントル起源を示す温泉ガスのヘリウム同位体比 (Umeda et al. 2014)や、地震波の低速度帯 (Sadeghi et al. 2000) や高減衰帯 (Saita et al. 2015)が推定され、震源域西側で深部低周波地震が発生していることも併せて、この地域の地震活動に深部起源流体が寄与している可能性が示唆されている。しかしながら前述の1997年鹿児島県北西部地震の不思議な点と地下構造との関連性は解明されていない。より高空間解像度な比抵抗構造を得ることで議論に新たな展望が開ける可能性がある。
本発表ではこの地域において日本原子力研究開発機構によって取得された41点の広帯域MT観測点(Umeda et al. 2014)、大学により取得された12点の広帯域MT観測点、15点の地電位観測点のデータを併せて解析する。両者ともおよそ 3.4×10-4 320 (Hz) の周波数帯の応答関数が得られている。発表では予察的な解析として1次元解析による比抵抗構造推定を行い、1997年鹿児島県北西部地震の地震活動との関連や、今後の追加観測の必要性について議論したい。

参考文献:Umeda, K., Asamori, K., Makuuchi, A., Kobori, K., 2014. Earthquake doublet in an active shear zone, southwest Japan: Constraints from geophysical and geochemical findings. Tectonophysics 634 (2014) 116–126