日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM15] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2023年5月24日(水) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (14) (オンラインポスター)

コンビーナ:吉村 由多加(九州大学大学院比較社会文化研究院)、臼井 洋一(金沢大学)


現地ポスター発表開催日時 (2023/5/23 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[SEM15-P09] 高空間分解能化に向けた走査型SQUID顕微鏡の改良と今後の展望

*小田 啓邦1河合 淳2福與 直人1谷元 瞭太3、河端 美樹2 (1.産業技術総合研究所地質情報研究部門、2.金沢工業大学、3.茨城大学)

キーワード:磁気顕微鏡、超伝導量子干渉素子、古地磁気学

我々は、2015年から古地磁気研究用として、走査型SQUID顕微鏡の開発を行なってきた[1-2]。地質試料の古地磁気情報をSQUID顕微鏡によって精密に検出・解析することで、太古の地球環境を読み解くことができる[3-5]。地質試料の残留磁化検出には、高感度かつ高空間分解能が望ましいが、そのためにはSQUID顕微鏡のSQUIDチップと室温試料間の距離(リフトオフ)を極力短くする必要がある。先に開発したシステムではリフトオフは約200μmを下回ることができなかった。熱伝導冷却用サファイアロッド先端に装着されたSQUID チップとの電気的接続を取っていた導電性ペーストの盛り上がりが理由の一つである。また、冷却毎に導電性ペースト-端子間の接触抵抗が大きくかつ変動することもSQUID磁力計としての特性に影響を与える問題もあった。ここでは、リフトオフを更に縮めること、電気的接続における接触抵抗を安定させることを目的に、SQUIDチップの実装方式の改良を行い、冷却試験を行ったので報告する。また、SQUID顕微鏡の運用状況を紹介し、今後の展望について検討する。
新たな実装方式では、従来1本であったサファイアロッドを上下に二分割した。SQUID チップを実装するロッド(第2ロッド)は直径6mmφで、SQUID チップを実装する先端部は円錐形である。円錐部の先端径は1.2mmφで、中心には0.8mm角・深さ0.1mmの窪みを形成し、窪みからからロッド側面に縦溝を形成した。SQUIDチップはワッシャ型で、サイズは0.75mm角、厚さ0.25mmである。このSQUID チップに配線前に直径25μmφ、長さ10mm程度のアルミワイヤを2本程度ボンディング接続した。アルミワイヤの付いたSQUID チップを第2ロッド先端の窪みにグリスで固定し、アルミワイヤをロッド側面の縦溝に沿わせ、導電性ペーストで固定した。SQUIDチップを実装した第2ロッドは、液体ヘリウムリザーバと熱的接続されている第1ロッドに接続される。アルミワイヤの終端部は直径0.3mm の金線と導電性ペーストで接続され、金線は電子回路から配線されている銅線に接続される。
改良後のサファイアロッド部を実装したSQUID顕微鏡に液体ヘリウムを注入して冷却試験を行った。既存の低ドリフトFLL回路で動作させた際の磁場ノイズは約4pT/√Hz@1Hz で感度は約660nT/V であった。また、SQUIDとケーブルを含めた抵抗値は安定しており、端子間抵抗も十分低くなった。直線電流による計測により、これまでで最短のリフトオフ187μmが確認できた。また、直線電流の発生磁場の理論値との誤差は1%以内であった。

謝辞
本研究はJSPS科学研究費補助金(20KK0082/21H0452300)の助成を受けて行われた。

参考文献
[1] J. Kawai, et al., IEEE Trans. Appl. Supercond., 26:1600905 (2016).
[2] H. Oda, et al., Earth, Planets and Space, 68:179 (2016).
[3] A. Noguchi, et al., Geophys. Res. Lett., 2017GL073201 (2017).
[4] J. A. Tarduno, et al., PNAS, 117, 2309-2318 (2020).
[5] N. Fukuyo, et al., Earth, Planets and Space, 73:77 (2021).