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[SGL22-05] 根室層群における白亜紀ー古第三紀境界のオスミウム同位体比記録を用いた層序検討
キーワード:オスミウム同位体、K-Pg境界、根室層群
約6600万年前の白亜紀―古第三紀境界(K-Pg境界)では、地球に小天体が衝突し、これにより恐竜を含む地上の75%もの生物種が絶滅したとされる。世界各地のK-Pg境界層でイリジウムに代表される白金族元素の濃集が認められ、天体衝突の証拠の一つとなっている。また白金族元素のひとつであるオスミウム同位体比(187Os/188Os)の低下も、隕石衝突や大規模火山活動を示す指標となる。このように白金族元素の異常濃集とオスミウム同位体比の低下によってK-Pg境界を定義し、世界各地のセクションと対比することができる。日本列島においては北海道白糠丘陵における根室層群勝平層で白亜紀末から古第三紀初頭の堆積物が報告されているが (Saito et al. 1986)、白金族元素の濃度や同位体比について詳細な検討がなされたセクションはない。そこで本研究では、同層群の川流布層が露出する川流布川支流の試料を用いて、K-Pg境界周辺のインターバルで白金族元素組成とオスミウム同位体比の検討を行った。川流布川支流の沢に沿った200 mの露頭について、20ヶ所で試料採取し、K-Pg境界に近いと推察される層準では高解像度サンプリングを行い、白金族元素の濃度とオスミウム同位体比の測定を行った。下位の白亜系最上部と思われる層準では、187Os/188Os 比はおよそ0.6 であり、先行研究で報告されている遠洋域堆積岩のマーストリヒチアンの値に一致する。一方、上位の古第三系最下部と思われる層準では、同位体比は0.4であり、やはり遠洋域堆積岩の暁新世の値に一致する。K-Pg境界は両者の境界部にあることが予想される。発表では、高解像度サンプリングから得られた結果を報告し、K-Pgの層序検討を行うと同時に、K-Pg境界をまたぐオスミウム同位体比の変動についても議論する。