10:45 〜 12:15
[SGL23-P04] 南部フォッサマグナ多重衝突帯における断層岩解析
キーワード:神奈川県、断層岩、面状カタクレーサイト
南部フォッサマグナ地域は,フィリピン海プレート上にある伊豆-小笠原弧が本州弧に衝突する現場として知られており,島弧 -島弧間の多重衝突帯として提唱されている(天野,1986).主な地質は,海洋プレート起源の衝突地塊である火山岩と,それらの間を埋める新第三紀以降の堆積岩類から構成されている. 神奈川県西部の静岡県東部にかけて分布している足柄層群は,鮮新世~更新世(Imanaga,1999)にかけて当時のトラフを充填した堆積物である.神奈川県丹沢山地付近に分布する足柄層群塩沢層の礫岩からは,断層活動によって破砕をうけた礫岩がカタクレーサイトとして変形していることが報告されている(小林・粉川,2014).衝突帯における礫の変形は,静岡県東部の富士川下流域に分布する富士川層群浜石岳層からも報告されており(鈴木・小林,2019),衝突に伴うイベントが記録されている可能性がある.そのため,本研究では塩沢層内に発達する変形礫岩を対象として各種解析を行った.
野外踏査の結果,塩沢層で変形を受けた礫岩は,塩沢層の上位に向かうにつれて変形が顕著になることが確認された.通常,カタクレーサイトは地下深部に向かうにつれ,圧力の増大と地温の上昇によって変形が促進されるため(Sibson,1983;C Passchier and R Trouw,1995),圧力の減少する上位層で変形が顕著に確認されることは,局所的な温度上昇や,圧力増大が考えられる.一方で,塩沢層の堆積深度は1㎞にも満たない事が報告されている(荒井・伊藤,1997).そのため,このような浅所でカタクレーサイトの形成に至ることは,極めて特異な地質体であると言える.
塩沢層の温度状況の推定には,XRD分析を使用し粘土鉱物の生成温度を用いた.また,併せて堆積岩中の炭質物を用いてラマン分光法を行い,二つの観点から温度環境を求めた.その結果,礫岩の変形が顕著な範囲と変形を起こしていない範囲での温度環境に明確な差は認められなかった.粘土鉱物は主にスメクタイトが豊富に含まれており,そこから示される温度環境は比較的低温下であると求められた.また,スメクタイトは酸化的環境で顕著に生成されるため,カタクレーサイトの形成深度は浅所であることが見積もられた.ラマン分光法はKoukethu et al(2014)に基づき,炭質物の結晶化度を測定した.結果,XRD分析と同様に低温環境下であることが示された.XRD分析,ラマン分光法のどちらの結果からも,層内での明瞭な温度変化は現れず,全体が均一な温度状況であると推察される.以上のことから,塩沢層は層内全体が150℃~200℃前後の「低温」かつ「浅所」で続成が進んだと結論づけた.
本研究では,塩沢層のカタクレーサイト形成に関して,その続成温度と環境が求められた.今後の方針として,圧力面に関する議論に重点を置いて解析を進める.具体的な手法として,Rf-Φ法による変形状況の比較や, X 線粉末回折法による石英の内部歪量の見積もり等を念頭に置いている.
野外踏査の結果,塩沢層で変形を受けた礫岩は,塩沢層の上位に向かうにつれて変形が顕著になることが確認された.通常,カタクレーサイトは地下深部に向かうにつれ,圧力の増大と地温の上昇によって変形が促進されるため(Sibson,1983;C Passchier and R Trouw,1995),圧力の減少する上位層で変形が顕著に確認されることは,局所的な温度上昇や,圧力増大が考えられる.一方で,塩沢層の堆積深度は1㎞にも満たない事が報告されている(荒井・伊藤,1997).そのため,このような浅所でカタクレーサイトの形成に至ることは,極めて特異な地質体であると言える.
塩沢層の温度状況の推定には,XRD分析を使用し粘土鉱物の生成温度を用いた.また,併せて堆積岩中の炭質物を用いてラマン分光法を行い,二つの観点から温度環境を求めた.その結果,礫岩の変形が顕著な範囲と変形を起こしていない範囲での温度環境に明確な差は認められなかった.粘土鉱物は主にスメクタイトが豊富に含まれており,そこから示される温度環境は比較的低温下であると求められた.また,スメクタイトは酸化的環境で顕著に生成されるため,カタクレーサイトの形成深度は浅所であることが見積もられた.ラマン分光法はKoukethu et al(2014)に基づき,炭質物の結晶化度を測定した.結果,XRD分析と同様に低温環境下であることが示された.XRD分析,ラマン分光法のどちらの結果からも,層内での明瞭な温度変化は現れず,全体が均一な温度状況であると推察される.以上のことから,塩沢層は層内全体が150℃~200℃前後の「低温」かつ「浅所」で続成が進んだと結論づけた.
本研究では,塩沢層のカタクレーサイト形成に関して,その続成温度と環境が求められた.今後の方針として,圧力面に関する議論に重点を置いて解析を進める.具体的な手法として,Rf-Φ法による変形状況の比較や, X 線粉末回折法による石英の内部歪量の見積もり等を念頭に置いている.