日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT43] ハイパフォーマンスコンピューティングが拓く固体地球科学の未来

2023年5月23日(火) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (17) (オンラインポスター)

コンビーナ:堀 高峰(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、八木 勇治(国立大学法人 筑波大学大学院 生命環境系)、汐見 勝彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、松澤 孝紀(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/22 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[STT43-P02] 3次元高詳細構造モデルを用いた1944年東南海・1946年南海地震によるプレート内応力変化計算

*橋間 昭徳1堀 高峰1飯沼 卓史1、村上 颯太2藤田 航平2市村 強2 (1.海洋研究開発機構、2.東京大学地震研究所)

キーワード:応力蓄積、南海トラフ、東南海・南海地震、フィリピン海プレート、内陸断層、有限要素法

西南日本弧にはフィリピン海プレートが南海トラフに沈み込み、100-200年の間隔で巨大地震が発生している。歴史地震の研究によれば、西南日本の内陸においては巨大地震の50年前から10年後までに内陸の被害地震が活発な時期がある。これらの内陸地震の活動性の予測のために、内陸の震源断層における応力蓄積を定量的に求める必要がある。巨大地震前については、ほぼ定常的な固着パターンから内陸の応力蓄積レートを計算することが可能である。しかし、巨大地震後については、過去の多様な破壊パターンとその後の粘弾性緩和を考慮した応力蓄積計算を行なっておく必要がある。本研究では、直近の破壊である1944年東南海地震-1946年南海地震に焦点を合わせ、これらの破壊による西南日本の内陸の断層に対する4年間の応力変化を見積もった。これらの破壊の後には、1945年三河地震、1948年福井地震などの内陸の〜M7の被害地震が引き続いている。現実的な粘性構造を考慮した応力計算のため、計算コストを削減可能な地殻変動解析手法に基づいた高詳細な有限要素モデルを用いた。計算した応力場は、内陸においては、基本的に1944年と1946年の地震時の弾性的な変化が支配的で、粘弾性的な変化はごくわずかである。一方、スラブ内においては、粘弾性的な変化が非常に大きく、地下の粘性構造を把握する重要性を示している。これらの応力場に基づいて、実効摩擦係数を0.4とし、各断層におけるクーロン応力変化(ΔCFS)を求めた。ΔCFSは基本的に1944年の破壊においては135°E以東の横ずれ断層が正のΔCFSとなる。一方、1946年南海地震後は四国の中央構造線の断層セグメントとその近傍の断層においてΔCFSが正となる。九州地方の断層は一貫してΔCFSは負であった。1945年三河地震や1948年福井地震のような内陸被害地震の発生もこのような基本傾向によって説明できた。このような傾向は、粘性構造や巨大地震のすべり分布にはあまり依存しなかった。しかし、非常に低粘性率のLABを仮定した場合、1891年濃尾地震の震源断層などでは1944年-1946年の破壊の直後にΔCFSが正となったが、その後の粘弾性緩和ではΔCFSが徐々に低下していくので、地震発生とは整合しなかった。また、1995年神戸地震の震源断層のように、粘性構造よりも1944年­-1946年の巨大地震のすべり分布に敏感な断層もある。これらの応力計算結果は、地震活動の比較により粘性構造やすべり分布の制約に用いることが可能である。