14:00 〜 14:15
[SVC31-12] ALOSおよびALOS-2による雲仙溶岩ドームの変形検出と物理モデリング
キーワード:雲仙、溶岩ドーム、粘弾性、InSAR、GNSS、有限要素法
雲仙は長崎県の島原半島中央部に位置する活火山である。1990年11月に始まった噴火に伴い1991年5月に溶岩ドームが形成され、その成長は1995年2月まで続いた。溶岩ドームは頂上部と東斜面に形成された溶岩ローブ部からなり、崩落の危険性が懸念されてきた。泉谷・高田(2022)は2015年以降の溶岩ドームの運動をALOS-2を用いたInSAR時系列解析により検出し、その結果を溶岩ドームの粘性流動および熱収縮により説明する有限要素法モデルを提案した。本研究では溶岩ドームの温度構造の時間発展が変形速度場におよぼす影響を定量的に理解するべく、ALOS(2006~2011年)および ALOS-2(2015~2022年) が撮像したSAR データを用いてInSAR 時系列解析を行い、より長期にわたる溶岩ドーム全体の変形を面的に検出した。さらにその結果を溶岩ドーム山頂部に設置されたGNSS観測点のデータ(1999-2022年)と統合し、時間と空間の両面から溶岩ドーム変形の有限要素モデルを拘束することを試みた。
SBAS法(Berardino et al., 2002)に基づくInSAR時系列解析の結果、LOS(衛星視線)方向の平均速度場は2006~2011年および 2015~2022年のいずれの期間でも、上昇・下降両軌道ともに衛星から遠ざかる運動を示した。その速度は上昇軌道では9.8 cm/yr (2006~2011年)および8.5 cm/yr (2015~2022年)、下降軌道では3.8cm/yr(2006~2011年)および3.4cm/yr (2015~2022年)であった。すなわち,2006~2011年の方が2015~2022年よりも速度が大きい。次に、LOS 方向の平均速度場を用いて 2.5 次元解析を行い、準上下・準東西方向の速度成分を得た。その結果、溶岩ドームが長期にわたり全体的に東進かつ沈降していることが定量的に明らかになった。頂上部の沈降成分は 2006~2011 年では 8.5cm/yr 、2015 年~2022 年では7.5cm/yr と時間とともに遅くなっており、これらの速度は頂上部のGNSSデータとも整合的であった。
上記のとおり InSAR 時系列解析から得られた結果は溶岩ドームの東向きかつ沈降運動を示し、その速度は時間と共に減少傾向にある。このことは泉谷・高田(2022)が提示した有限要素モデルに次のように拘束条件を与え得る。(1)溶岩ドームの巨視的な粘性流動:高温の溶岩ドームは東に強く傾斜した旧山体の上に形成されたため、重力によって東方向に流動する(Matsushima and Takagi, 2000)。温度が高いほど実効粘性率は低くなることは、ALOSの時代の方がALOS-2の時代よりも速度が大きいことと整合的である。(2)熱弾性:溶岩ドーム内部の温度減少に伴い熱収縮が発生する。溶岩ドーム形成から時間がたつにつれて冷却速度は小さくなることは、山頂の沈降速度が時間とともに減少することと整合的である。
参考文献:
泉谷拓郎・高田陽一郎,雲仙溶岩ドームの変形速度場とその物理メカニズムについて:InSAR時系列解析の適用,2022年地球惑星科学連合大会, SVC34-P07
Matsushima, T., Takagi, A., GPS and EDM monitoring of Unzen volcano ground deformation, Earth Planet and Space, 52, 1015-1018, 2000.
謝辞:本研究は東京大学地震研究所共同利用 (2021-B-03) の援助をうけた.本研究で用いたPALSAR-2データはPIXEL (PALSAR Interferometry Consortium to Study our Evolving Land surface) において共有しているものであり,宇宙航空研究開発機構 (JAXA) とPIXELとの共同研究契約に基づきJAXAから提供されたものである.PALSAR-2データの所有権はJAXAにある.雲仙砂防管理センターからGNSSデータの提供を受けた。
SBAS法(Berardino et al., 2002)に基づくInSAR時系列解析の結果、LOS(衛星視線)方向の平均速度場は2006~2011年および 2015~2022年のいずれの期間でも、上昇・下降両軌道ともに衛星から遠ざかる運動を示した。その速度は上昇軌道では9.8 cm/yr (2006~2011年)および8.5 cm/yr (2015~2022年)、下降軌道では3.8cm/yr(2006~2011年)および3.4cm/yr (2015~2022年)であった。すなわち,2006~2011年の方が2015~2022年よりも速度が大きい。次に、LOS 方向の平均速度場を用いて 2.5 次元解析を行い、準上下・準東西方向の速度成分を得た。その結果、溶岩ドームが長期にわたり全体的に東進かつ沈降していることが定量的に明らかになった。頂上部の沈降成分は 2006~2011 年では 8.5cm/yr 、2015 年~2022 年では7.5cm/yr と時間とともに遅くなっており、これらの速度は頂上部のGNSSデータとも整合的であった。
上記のとおり InSAR 時系列解析から得られた結果は溶岩ドームの東向きかつ沈降運動を示し、その速度は時間と共に減少傾向にある。このことは泉谷・高田(2022)が提示した有限要素モデルに次のように拘束条件を与え得る。(1)溶岩ドームの巨視的な粘性流動:高温の溶岩ドームは東に強く傾斜した旧山体の上に形成されたため、重力によって東方向に流動する(Matsushima and Takagi, 2000)。温度が高いほど実効粘性率は低くなることは、ALOSの時代の方がALOS-2の時代よりも速度が大きいことと整合的である。(2)熱弾性:溶岩ドーム内部の温度減少に伴い熱収縮が発生する。溶岩ドーム形成から時間がたつにつれて冷却速度は小さくなることは、山頂の沈降速度が時間とともに減少することと整合的である。
参考文献:
泉谷拓郎・高田陽一郎,雲仙溶岩ドームの変形速度場とその物理メカニズムについて:InSAR時系列解析の適用,2022年地球惑星科学連合大会, SVC34-P07
Matsushima, T., Takagi, A., GPS and EDM monitoring of Unzen volcano ground deformation, Earth Planet and Space, 52, 1015-1018, 2000.
謝辞:本研究は東京大学地震研究所共同利用 (2021-B-03) の援助をうけた.本研究で用いたPALSAR-2データはPIXEL (PALSAR Interferometry Consortium to Study our Evolving Land surface) において共有しているものであり,宇宙航空研究開発機構 (JAXA) とPIXELとの共同研究契約に基づきJAXAから提供されたものである.PALSAR-2データの所有権はJAXAにある.雲仙砂防管理センターからGNSSデータの提供を受けた。