15:53 〜 16:16
[U09-05] 持続可能な発展のための資源循環の重要性とそれを支える科学的研究
★招待講演
キーワード:循環経済、カーボンニュートラル、リユース、リサイクリング、分離
豊かで便利な生活を享受しながらWell-beingを向上させることは人類の疑いのない要望であるが,プラネタリーバウンダリーを強く意識せざるを得ない現状では,Well-being向上と環境負荷低減や資源消費抑制を同時実現する「デカップリング」が強く求められている(Fig.1).しかし,例えば環境負荷の1つであるGHG削減については,再生可能エネルギー利用の促進や蓄電池の導入といったカーボンニュートラルを目指した新規技術を積極的に導入すると,現在以上に鉱物資源の需要が急増することが懸念されている.一方,資源循環には回収や運搬,分離に少なからずエネルギーを要するので,現在以上に資源循環を促進しようとすると,さらにエネルギーを要することになりGHG排出増加につながりかねない.このように,GHG削減といった環境負荷低減と資源循環とは必ずしも両立しない.
これを両立させるための1つの概念として,EUでは2015年にサーキュラーエコノミーという概念が発表された.これは,メンテナンスや長寿命化,リユース,リファービッシュ,リサイクルといった多重の資源循環ループを新たなビジネスとして展開し,資源循環に経済性を持たせることによって,まさにSDGsの目標である経済,社会,環境の調和を達成しようとするものである(Fig.2).サーキュラーエコノミーでは,これまでのようにリニアエコノミー型の大量生産,大量消費と,それを支えるリサイクルと廃棄物処理,といった一番外側のリサイクルループを構築するのみでなく,消費構造やビジネスモデルの変革をも含むシェアリングやメンテナンス,長寿命化,リユースなど,内側の多重循環ループの創成が求められる.サーキュラーエコノミーの内側の循環ループを達成するほど,省資源で機能を共有しながらの資源循環を達成することができ,GHG削減と資源循環の両立に対する効果は高い.
以上のように,これまで以上に多様な資源循環を達成するためには,使用済み製品を現在以上に自在に分離し,余すところなく残存機能を再利用する技術が必要となる.そのためには,対象を自在に分離する技術が必要である.外側の資源循環ループであり資源循環全体を支えるリサイクルのための分離技術は,現在でも種々研究開発が進められているが,GHG削減を目指すためにはさらに省エネルギー化かつ高精度化する必要がある.一方,内側の資源循環ループを構築するためには,対象を異相境界面で精度高く分離する必要があり,現在以上に物理と化学とを融合した選択性の高い分離技術開発が求められる.将来的には,製品を設計や製造の段階から易分解設計し,使用後に異相境界面で分離することをあらかじめ想定したする発想も求められる(Fig.3).
本講演ではこれらの状況を改めて整理するとともに,蓄電池や太陽光パネルといったカーボンニュートラルに大きく関係するデバイスに対する分離技術の高精度化のために筆者らか取り組んでいる研究例を紹介する.使用済み製品から資源を回収するためには,物理的または化学的な分離濃縮技術が必要不可欠であるが,いわば粉体プロセス技術の宝庫である物理的分離濃縮技術は,化学的技術に比べて省エネルギーであるものの分離精度が高くないという課題を有する.本講演では,リチウムイオン電池や太陽光パネル,接着材料といったカーボンニュートラルとも関係が深い次世代型製品・材料に対して,選択性の高い化学的作用を取り入れて物理的分離濃縮技術の高度化を研究開発した例を紹介する.
これを両立させるための1つの概念として,EUでは2015年にサーキュラーエコノミーという概念が発表された.これは,メンテナンスや長寿命化,リユース,リファービッシュ,リサイクルといった多重の資源循環ループを新たなビジネスとして展開し,資源循環に経済性を持たせることによって,まさにSDGsの目標である経済,社会,環境の調和を達成しようとするものである(Fig.2).サーキュラーエコノミーでは,これまでのようにリニアエコノミー型の大量生産,大量消費と,それを支えるリサイクルと廃棄物処理,といった一番外側のリサイクルループを構築するのみでなく,消費構造やビジネスモデルの変革をも含むシェアリングやメンテナンス,長寿命化,リユースなど,内側の多重循環ループの創成が求められる.サーキュラーエコノミーの内側の循環ループを達成するほど,省資源で機能を共有しながらの資源循環を達成することができ,GHG削減と資源循環の両立に対する効果は高い.
以上のように,これまで以上に多様な資源循環を達成するためには,使用済み製品を現在以上に自在に分離し,余すところなく残存機能を再利用する技術が必要となる.そのためには,対象を自在に分離する技術が必要である.外側の資源循環ループであり資源循環全体を支えるリサイクルのための分離技術は,現在でも種々研究開発が進められているが,GHG削減を目指すためにはさらに省エネルギー化かつ高精度化する必要がある.一方,内側の資源循環ループを構築するためには,対象を異相境界面で精度高く分離する必要があり,現在以上に物理と化学とを融合した選択性の高い分離技術開発が求められる.将来的には,製品を設計や製造の段階から易分解設計し,使用後に異相境界面で分離することをあらかじめ想定したする発想も求められる(Fig.3).
本講演ではこれらの状況を改めて整理するとともに,蓄電池や太陽光パネルといったカーボンニュートラルに大きく関係するデバイスに対する分離技術の高精度化のために筆者らか取り組んでいる研究例を紹介する.使用済み製品から資源を回収するためには,物理的または化学的な分離濃縮技術が必要不可欠であるが,いわば粉体プロセス技術の宝庫である物理的分離濃縮技術は,化学的技術に比べて省エネルギーであるものの分離精度が高くないという課題を有する.本講演では,リチウムイオン電池や太陽光パネル,接着材料といったカーボンニュートラルとも関係が深い次世代型製品・材料に対して,選択性の高い化学的作用を取り入れて物理的分離濃縮技術の高度化を研究開発した例を紹介する.