[A-AS08] 気象学一般

[AAS08-05] 竜巻の進行方向の偏りと対流圏中層の風向との関係

*三田 優里¹、神山 翼¹ (1.お茶の水女子大学)

キーワード：竜巻、スーパーセル、角度相関

竜巻とは、積乱雲に伴って発生する激しい上昇気流の渦であり、短時間で狭い帯状の範囲に甚大な被害をもたらす。大気の状態が非常に不安定な時に発生するがその予測は難しく、未だ目視での観測報告や被害調査に頼っている状況である。人体や家屋への被害を減らすために、進路予測の可能性と注目すべき特徴量について議論する。
Niino et al. (1997) は1961年から1993年の間に日本で発生した竜巻事例を統計的に調査し、半数以上の竜巻が発生後に北東象限に進んだと報告した。ただし進行方向の多くは目撃情報に基づいたデータであるために正確とは言えず、回答に偏りがあることが当該研究内で指摘されている。そこで本研究では、竜巻の移動方向について、期間を拡大して統計をとり、進行方向の偏りについて調査する。その後大規模気象場の風向と竜巻の進行方向の関係を調査し、竜巻の進路を決定する要因を考察する。
まず初めに、気象庁の突風データベースから、竜巻の被害域の始点と終点を用いて、より正確な進行方向を算出する。その結果、発生地点から移動した竜巻の約7割が北東象限に進行していた。被害調査の方法が時代を経て変わっても、年代によらず北東象限に偏っていることから、進行方向の偏りが偶然でないことを確認した。どの季節においても北東象限に偏っているが、夏と秋では、16方位のうち北と東に突出して多い。このうち、北に進む竜巻の多くは台風に伴う竜巻であることがわかった。また、被害が一定以上の竜巻に絞って統計をとっても、北東象限の偏りに変化はなく、台風性竜巻の割合の増加による北方向の
増加に留まる。
次に、発生時の風向と竜巻の進行方向を比較すると、対流圏中層の気圧面で特に高い相関が得られた。一方で、風の向きに対して逸れて進行する竜巻の数は左右に非対称であり、多くの竜巻が、風に対して反時計回りに0度から60度逸れた向きに進行している。そこで、Bunkers et al. (2000) の提案する手法に倣ってスーパーセルの移動方向を予測することで、スーパーセルと竜巻の進行方向が整合するかについて定量的に検証する。