[A-CG32] 中緯度大気海洋相互作用

[ACG32-P04] 冬季に黒潮続流域でみられる強い温帯低気圧に対する大気・海洋の背景場

*小川 泰生¹、根田 昌典¹、吉田 聡² (1.京都大学大学院理学研究科、2.京都大学防災研究所)

キーワード：温帯低気圧、東シナ海、大気の大規模循環、海面熱フラックス、海面水温、統計解析

本研究では，冬季に黒潮続流域で急激に発達する温帯低気圧の，初期段階における大気・海洋の背景場を調べた．黒潮続流域で発達する低気圧の発生域が東シナ海周辺に集中していることから，東シナ海周辺で発生する低気圧を主要な対象とした．最初に，それらの低気圧を，強度や経路に基づいてStrong，Moderate，Weakの3つに分類した．Strongな低気圧およびModerateな低気圧は，Weakな低気圧にはみられない，発生域の東側の高気圧に伴う暖かく湿った空気の流入を特徴とすることが分かった．また，高気圧の形成には，南シナ海の海面水温に関係する対流圏上層の波束伝播が影響している可能性が示唆された．Strongな低気圧とModerateな低気圧の違いは，上流側のトラフに伴う北西からの寒気移流により促進される蒸発の強さに帰着することができた．特に，黒潮と東シナ海の間の水温前線上を通過するときに，低気圧の南西側での蒸発量の違いが顕著に現れ始めた．このような，Strongな低気圧とModerateな低気圧の初期段階における状況の違いが，黒潮続流域に達する以前に低気圧が受ける潜熱フラックスの量に違いを生じさせうることが示された．これらの結果から，黒潮続流域でみられる温帯低気圧の強度は，発生時や発達の初期段階での大気や海洋の状況に影響を受けることが示唆された．