[A-CG39] 沿岸海洋生態系－1．水循環と陸海相互作用

[ACG39-04] 熊本県緑川河口部干潟における潜在的海底湧水の可視化

*山田 誠¹、杉本 亮²、小森田 智大³ (1.龍谷大学経済学部、2.福井県立大学海洋生物資源学部、3.熊本県立大学環境共生学部)

キーワード：海底湧水、可視化、比抵抗分布調査、干潟

沿岸海域ではこれまで数多くの海底湧水研究が行われており、海底湧水（SGD：Submarine Groundwater Discharge）が栄養塩やその他の溶存物質の海洋への供給において重要な役割を果たしていることが広く認識されている。海底におけるSGDの湧出現象は一様ではなく、湧出したSGDの影響範囲も不均一であると考えられている。また、海底下に淡水や淡水混じりの海水が存在したとしても、それらは必ずしも湧出しているわけではない。そのような潜在的SGDは何かの拍子に湧出する可能性を秘めている。SGDを視覚的に捉えることは難しいが、SGDは沿岸海域の生態系に影響を与えている可能性があることから、このような潜在的SGDも含めたSGDの空間分布を把握することは非常に重要であろう。
そこで本研究では、海底下地下水の分布の3次元的な可視化を目的として、熊本県の緑川河口部干潟において、曳航型電気探査法を用いて比抵抗分布調査を行った。また、ドローンによる干潟表面の温度分布の調査も併せて行った。本地域では、過去にも曳航型電気探査法により海底下浅部の地質構造の調査が行われており、現河川および古河川の伏流水が海底地下水となって存在する可能性が示唆されている（御薗生ほか, 2012）。
比抵抗分布調査の結果、河口部の海底下数mの場所に比抵抗値の高い領域が見られ、海底下（干潟下）に淡水もしくは淡水混じりの地下水が存在する可能性が示唆された。また、複数の観測線データを用いて作成した3次元分布から、これらの地下水が空間的に広がっている可能性が示唆され、潜在的海底湧水の存在が確認された。発表では、SGDの湧出現象の有無やSGD分布と周辺地形との関係について詳述する予定である。