11:00 〜 11:15
[ACG43-07] 沿岸海洋シミュレーションのための海陸結合モデルの開発~急潮再現の試み~
★招待講演
キーワード:急潮、FVCOM、RRI、MSM、若狭湾
沿岸海域で発生する様々な現象には陸域からの淡水流入、気象場の変動,外海との相互作用など時空間スケールの異なる複数の要因が関係している。本研究ではこうした沿岸海域の様々な現象の再現・予報のために、非構造格子を採用した高解像度沿岸海洋モデルFVCOM(Finite Volume Community Ocean Model, Chen et al.2006)をベースとして,気象場に気象庁MSM/GPVデータ、外海条件に海況予測モデルDREAMS (Hirose et al.2005),淡水流入量評価に降雨流出氾濫モデルRRI(Rainfall Runoff Inundation model,佐山ら,2014)を結合した高解像度沿岸海洋モデルUCHI(Unstructured Coastal model with High resolution Information)を開発している。本発表では若狭湾で発生する急潮現象への適用事例について報告する。
若狭湾は京都府と福井県に跨るリアス式の開放型湾であり,非常に複雑な沿岸・海底地形を有している.定置網漁業が盛んであり,その漁獲量は京都府全体の約80%を占める.定置網漁業者を悩ませる問題が,流速0.5m/s以上の突発的な速い流れ,いわゆる急潮による漁具破損である.被害を軽減するには急潮発生前に定置網の一部を取り外して陸上へ退避させる必要があるが,重労働で漁獲も見込めなくなることから,対策を講じるのは最低限に抑えることが望ましい.
既往研究より若狭湾における急潮は沖合を流れる対馬海流,地球自転に伴うコリオリ力によって発生する慣性振動,台風や温帯低気圧が通過した際の強風連吹、湾に流入する一級河川からの淡水挙動が関係するなど、様々な時空間スケールを有する現象が複合的に影響して発生することが知られている.そのため、数値モデルには淡水流入過程の正確な評価、湾の複雑な沿岸海底地形の再現、外海や気象場の影響を適切に導入することが求められる。現在、DREAMSによる急潮予報が試みられているが再現率は10%程度にとどまっている.
UCHIモデルの計算対象領域は、若狭湾および周辺海域で発生する急潮を再現するためにできるだけ広い計算領域を設定した。水平格子の解像度は,開境界で1500m,湾奥部で最小70mとし、陸域・海底地形を詳細に再現した.鉛直格子は一般δ座標を使用しており,層数は 20 層としている.開境界条件には DREAMS_Cpから潮位,流れ,水温,塩分を導入した.気象条件には気象庁メソ数値予報モデル MSM/GPVを使用した.計算領域内に流入する淡水流入量はRRIモデルを用いて算出した. 陸域地形にはHydroSHEDS (https://www. hydrosheds.org/),土地利用データに国土交通省による土地利用細分メッシュデータ(https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-L03-b.html)を用いた.陸地形および土地利用データの空間解像度は15秒(約400m)とした.RRIに入力する雨量データには気象庁MSM/GPVによる出力値を使用した.UCHIによる再現計算は2021年,2022年を対象とし,現地観測値との比較を通して急潮の再現性について検討した.
UCHIによって丹後半島の北部から西部に伸びる0.5 m/s以上の流れが半島を回るように若狭湾内に進行する様子が再現された. こうした特徴は,鳥取県沖から兵庫県沖を抜ける強い沿岸流が半島を回って若狭湾に入る急潮の特徴をよく再現していた.また急潮の湾内への侵入に伴って、時計回りの発達した還流も確認された。若狭湾周辺の岸近傍の地点において観測された流速のうち、上位5%(平均値+2標準偏差以上)の強流に対してUCHIモデルによる再現率を評価した。その結果,UCHIによる再現率は約40%となり,現行モデル(DREAMS)を上回る結果となった.特に急潮の発生が多く報告されている海域ではさらに高い再現率を確認した.この結果は急潮再現に対するUCHIモデルの有効性を示している.
若狭湾は京都府と福井県に跨るリアス式の開放型湾であり,非常に複雑な沿岸・海底地形を有している.定置網漁業が盛んであり,その漁獲量は京都府全体の約80%を占める.定置網漁業者を悩ませる問題が,流速0.5m/s以上の突発的な速い流れ,いわゆる急潮による漁具破損である.被害を軽減するには急潮発生前に定置網の一部を取り外して陸上へ退避させる必要があるが,重労働で漁獲も見込めなくなることから,対策を講じるのは最低限に抑えることが望ましい.
既往研究より若狭湾における急潮は沖合を流れる対馬海流,地球自転に伴うコリオリ力によって発生する慣性振動,台風や温帯低気圧が通過した際の強風連吹、湾に流入する一級河川からの淡水挙動が関係するなど、様々な時空間スケールを有する現象が複合的に影響して発生することが知られている.そのため、数値モデルには淡水流入過程の正確な評価、湾の複雑な沿岸海底地形の再現、外海や気象場の影響を適切に導入することが求められる。現在、DREAMSによる急潮予報が試みられているが再現率は10%程度にとどまっている.
UCHIモデルの計算対象領域は、若狭湾および周辺海域で発生する急潮を再現するためにできるだけ広い計算領域を設定した。水平格子の解像度は,開境界で1500m,湾奥部で最小70mとし、陸域・海底地形を詳細に再現した.鉛直格子は一般δ座標を使用しており,層数は 20 層としている.開境界条件には DREAMS_Cpから潮位,流れ,水温,塩分を導入した.気象条件には気象庁メソ数値予報モデル MSM/GPVを使用した.計算領域内に流入する淡水流入量はRRIモデルを用いて算出した. 陸域地形にはHydroSHEDS (https://www. hydrosheds.org/),土地利用データに国土交通省による土地利用細分メッシュデータ(https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-L03-b.html)を用いた.陸地形および土地利用データの空間解像度は15秒(約400m)とした.RRIに入力する雨量データには気象庁MSM/GPVによる出力値を使用した.UCHIによる再現計算は2021年,2022年を対象とし,現地観測値との比較を通して急潮の再現性について検討した.
UCHIによって丹後半島の北部から西部に伸びる0.5 m/s以上の流れが半島を回るように若狭湾内に進行する様子が再現された. こうした特徴は,鳥取県沖から兵庫県沖を抜ける強い沿岸流が半島を回って若狭湾に入る急潮の特徴をよく再現していた.また急潮の湾内への侵入に伴って、時計回りの発達した還流も確認された。若狭湾周辺の岸近傍の地点において観測された流速のうち、上位5%(平均値+2標準偏差以上)の強流に対してUCHIモデルによる再現率を評価した。その結果,UCHIによる再現率は約40%となり,現行モデル(DREAMS)を上回る結果となった.特に急潮の発生が多く報告されている海域ではさらに高い再現率を確認した.この結果は急潮再現に対するUCHIモデルの有効性を示している.