日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW24] 同位体水文学2024

2024年5月31日(金) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:安原 正也(立正大学地球環境科学部)、浅井 和由(株式会社 地球科学研究所)、中村 高志(山梨大学大学院・国際流域環境研究センター)、柏谷 公希(京都大学大学院工学研究科)

17:15 〜 18:45

[AHW24-P07] 水同位体分析による北海道知床硫黄山温泉水の涵養域推定と溶融硫黄噴火メカニズムの解釈

*山本 睦徳1柏谷 公希2、多田 洋平2後藤 忠徳3小池 克明2 (1.大阪市立自然史博物館、2.京都大学大学院工学研究科 都市社会工学専攻地球資源学講座地殻環境工学分野、3.兵庫県立大学 大学院理学研究科 地球科学講座)

キーワード:知床硫黄山、溶融硫黄噴火、水同位体分析、標高効果、カムイワッカ温泉

知床硫黄山は, 北海道知床半島の中央部に位置する活火山で, 大量の溶融硫黄を噴出することで広く知られている. 同山の北西中腹標高600 mに位置する1号火口(新噴火口)においては, 江戸時代末期から4回の溶融硫黄噴火が記録されてきた. 特に1936年の最後の噴火では, 1936年から1943年までの8年間に粗鉱量116,523トン, 硫黄含有量に換算して96,208トンもの生産実績をあげたとされる(工業技術院地質調査所, 1967). これまでの研究で火口周辺の自然電位探査を行い, 火山活動が活発な地域を特定した(Yamamoto et al. 2017). また電気探査・現地踏査の結果,および渡邉・下斗米(1937)の記述との照合により, 硫黄生成に地下水が関わっていることを明らかにした. しかしながら, 地下水の経路についてはこれまで十分に明らかになっておらず, 1号火口やカムイワッカ川で温泉の湧出が確認されているのみである.そこで, 本研究では採取した水試料の地化学分析により, 溶融硫黄噴火のメカニズムに関わる地下水の分布と流動形態を明らかにすることを目的とした. そのためにカムイワッカ温泉水, 1号火口温泉水, および周辺地域の河川水などを採取し, キャビティリングダウン分光法とイオンクロマトグラフィーにより, 水素-酸素同位体比とNa+, K+, Mg2+, Ca2+, F-, Cl-, SO42-などの主要イオン濃度を明らかにした.これらの特徴から,電気探査による比抵抗分布で特定できた1号火口地下の帯水層, カムイワッカ温泉の帯水層が硫黄生成場と見られる火山ガス上昇部と繋がっていることが推定できた. さらに周辺地域の河川水と水素・酸素同位体比を比較することで, カムイワッカ川温泉水の涵養域の標高を推定するとともに, 火口周辺の地下水流動系を明らかにすることで, 溶融硫黄噴火のメカニズムを解釈する.

文献:

工業技術院地質調査所.1967.北海道金属非金属鉱床総覧.

渡辺武男・下斗米俊夫.1937.北海道地質調査会報告9北見国知床硫黄山昭和11年の活動:1-91

Yamamoto, M., Goto, T-n., Kiji, M., 2017. Possible mechanism of molten sulfur eruption:
Implications from near-surface structures around of a crater on a flank of Mt. Shiretokoiozan, Hokkaido, Japan. J. Volcanol. Geoth. Res. 346, 212–222.