17:15 〜 18:45
[AOS16-P03] 瀬戸内海における年間のpCO2推定

キーワード:二酸化炭素、二酸化炭素フラックス、瀬戸内海、空間分布、季節変動、ランダムフォレスト
沿岸海域における海水中二酸化炭素は,外洋域と比べデータが蓄積されておらず,研究例は少ない.海洋生態系に被害をもたらす海洋酸性化や海域により異なるCO2収支の観点より,沿岸海域における海水中二酸化炭素の理解は重要であるが,直接測定することが難しい.本研究では,瀬戸内海および周辺海域で測定された海水中の二酸化炭素および関連するデータをもとに,機械学習の1つであるランダムフォレストを使用し,比較的測定が容易なパラメータより海水中二酸化炭素を推定することで,その季節変動および年間のCO2 flux(二酸化炭素交換量)を明らかにすることを目的とする.
神戸大学大学院海事科学研究科付属練習船深江丸で,1994年から2010年に行われた冬季(3月),夏季(7,8,9月)の計23回の航海でデータを取得した.船底約3mからのインテイク水を用いて,pCO2(海水中二酸化炭素分圧, µatm),T(海水温度,℃),S(塩分),DO (溶存酸素,mg/L),pHを測定した.データを訓練データと検証データに分け,ランダムフォレストに訓練データを入力することでモデルを構築した.それらは大阪湾,備讃瀬戸,その他海域に分けた3種類のモデルである.構築したモデルに検証データを入力し精度を検証した.続いて,訓練データが多いほど精度が向上するため,全てのデータを用いてモデルを構築し,瀬戸内海総合水質調査のデータを入力して,pCO2を推定した.瀬戸内海総合水質調査のデータは実測と同じ年のものを使用し,春季を4月から6月,夏季を7月から9月,秋季を10月から12月,冬季を1月から3月とした.
精度を検証した結果,大阪湾,備讃瀬戸,その他海域におけるpCO2の推定値と実測値のRMSEは,それぞれ37.7,43.6,19.8であり,バルト海でランダムフォレストを用いた研究(Shuping, et, al. 2019)のRMSEよりも小さかった.また誤差は,実測値の変動幅と比較すると2割〜3割程度であり,精度よく推定できたと考えられる.実測データを訓練データとし,推定した結果,冬季のpCO2が最も低く,春季から夏季にかけて高くなった.夏季と秋季は同程度だった.大阪湾におけるpCO2が年間を通して最も低く,高い基礎生産によるCO2消費が示唆された.備讃瀬戸におけるpCO2は春季から秋季にかけて最も高かった.備讃瀬戸に隣接する燧灘と播磨灘は夏季に成層し,その底層には有機物分解により生じた貧酸素水塊が確認されており,高CO2水塊の存在が示唆される(Taguchi, Fujiwara, 2010).その底層水が備讃瀬戸底層に移流し,混合により湧昇したため,pCO2は高かったと考えられる.秋季から冬季にかけてpCO2は大きく減少し,分布も大きく変化した.秋季から冬季にかけて湾灘部の成層域が混合域に変化し,水温の影響を強く受けるようになったためだと考えられる.通年のCO2 fluxを計算すると,瀬戸内海全体ではCO2の吸収源になっていることが明らかになった.
神戸大学大学院海事科学研究科付属練習船深江丸で,1994年から2010年に行われた冬季(3月),夏季(7,8,9月)の計23回の航海でデータを取得した.船底約3mからのインテイク水を用いて,pCO2(海水中二酸化炭素分圧, µatm),T(海水温度,℃),S(塩分),DO (溶存酸素,mg/L),pHを測定した.データを訓練データと検証データに分け,ランダムフォレストに訓練データを入力することでモデルを構築した.それらは大阪湾,備讃瀬戸,その他海域に分けた3種類のモデルである.構築したモデルに検証データを入力し精度を検証した.続いて,訓練データが多いほど精度が向上するため,全てのデータを用いてモデルを構築し,瀬戸内海総合水質調査のデータを入力して,pCO2を推定した.瀬戸内海総合水質調査のデータは実測と同じ年のものを使用し,春季を4月から6月,夏季を7月から9月,秋季を10月から12月,冬季を1月から3月とした.
精度を検証した結果,大阪湾,備讃瀬戸,その他海域におけるpCO2の推定値と実測値のRMSEは,それぞれ37.7,43.6,19.8であり,バルト海でランダムフォレストを用いた研究(Shuping, et, al. 2019)のRMSEよりも小さかった.また誤差は,実測値の変動幅と比較すると2割〜3割程度であり,精度よく推定できたと考えられる.実測データを訓練データとし,推定した結果,冬季のpCO2が最も低く,春季から夏季にかけて高くなった.夏季と秋季は同程度だった.大阪湾におけるpCO2が年間を通して最も低く,高い基礎生産によるCO2消費が示唆された.備讃瀬戸におけるpCO2は春季から秋季にかけて最も高かった.備讃瀬戸に隣接する燧灘と播磨灘は夏季に成層し,その底層には有機物分解により生じた貧酸素水塊が確認されており,高CO2水塊の存在が示唆される(Taguchi, Fujiwara, 2010).その底層水が備讃瀬戸底層に移流し,混合により湧昇したため,pCO2は高かったと考えられる.秋季から冬季にかけてpCO2は大きく減少し,分布も大きく変化した.秋季から冬季にかけて湾灘部の成層域が混合域に変化し,水温の影響を強く受けるようになったためだと考えられる.通年のCO2 fluxを計算すると,瀬戸内海全体ではCO2の吸収源になっていることが明らかになった.