日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-02] 地球惑星科学のアウトリーチ・実践と理論

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:玉澤 春史(東京大学生産技術研究所)、塚田 健(平塚市博物館)、寺薗 淳也(合同会社ムーン・アンド・プラネッツ)、座長:塚田 健(平塚市博物館)、玉澤 春史(東京大学生産技術研究所)

13:45 〜 14:15

[G02-01] 中高生向け野外実習参加者傾向に関する考察

★招待講演

*小俣 珠乃1,2木戸 ゆかり1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構、2.日本地球科学教育普及協会)

キーワード:野外巡検、中高生、webサイト

地学教育において野外実習は非常に重要な教育的要素であるが、中等教育における地学野外実習は数少ない。
筆者は、国際計画の次世代育成事業で実施した野外実習参加者のうち、一定数が大学で地球科学関連学科に進学する情報を得たことをきっかけに、2022年、2023年と山梨県身延町にある湯之奥金山遺跡およびその周辺で地学実習を実施している。学校教育機関以外の場所において地学普及を行うという事例であることから、筆者が実施した実習においては、学校で実施する野外実習と比較し、いくつかの工夫を施している。
工夫の1点目は参加範囲の設定である。実習は2日に渡って実施しており、1日目は湯之奥金山博物館前を流れる下部川河川敷での岩石、鉱物観察、2日目は湯之奥金山遺跡見学である。募集年齢は小学校5年生から高校3年生であるが、小学生の参加に関しては保護者同伴を条件とし、中学生以上に関しては保護者同伴は必須ではないが、生徒の安全面の確保の目的から希望する保護者の同伴を受け入れている。また、1日目の河川敷での実習では、募集年齢に満たない参加生徒の弟、妹も受け入れる形で、家族単位で参加できる形をとるよう配慮している。これは、野外実習に参加する生徒が宿泊を伴い参加する場合、家族旅行の形で参加できるように配慮したものである。
2点目は、募集にあたっては、事前にホームページにて実習場所の地学に関係する概略を丁寧に紹介することである。特に、実習場所の地学に関する背景が多面的に理解できるように、実習地の歴史や文化も取り込むようにしている。Webサイトでこれらの説明を行った上で、チラシ、webサイト、メーリングリストなどで募集案内を行っている。
参加者に関する興味深い傾向としては、2022年度の募集時には身延近隣である山梨県、静岡県からの参加を見込んで、教育委員会や地域の博物館にチラシを置いてもらうなどの工夫を試みたものの、参加者については、2年とも山梨県および静岡県からの参加申し込みは0名で、参加者は東京、神奈川、千葉、埼玉からの参加者で占められていた。参加者アンケートによると、参加のきっかけとしては、2022年、2023年ともに高校教諭から直接聞いたり、高校でチラシを受け取るなどの形で募集を知るという傾向が見られた。これらのことから、野外実習の参加募集に関しては、高校の理科教諭または地学教諭が大きな役割を果たしていることがわかる。
また、2023年はwebおよびSNSに関するデータ取得も行なった。実習募集開始から実習までの期間についてwebおよびSNSのアクセス統計を集計すると、募集開始10 日後からのログ記録開始データであっても、野外実習募集のお知らせは他ページの約10倍のアクセスがあった。また、SNSに関しては、募集期間中のインプレッション総数3,548 件に対し、実習告知のインプレッションは1,233 件と約1/3を占めていた。動画の完了率に関しても、実習完了後に公開した野外実習関連動画の完了率が一番高く(23.3%)、野外実習に対する関心の高さが伺える。WEBとSNSの動向を見ると、参加者に直接効果をもたらしているかは未知の部分であるが、間接的な効果の可能性は考えられる。
これらの動向は、生徒1名が学校教育外の実習に参加するという行動に至るまでには、生徒の周りの大人である学校教諭などの指導者や親などへの理解、働きかけが効果を生んでいること、また、WEBサイトに掲載している実習の内容などは、彼らが信用して理解するための重要なツールになっている可能性を示唆している。