14:15 〜 14:30
[G02-02] 初等中等教育における多機関連携授業の実践と課題
~小学校・高校―大学―地域での事例~
キーワード:多機関連携教育、地理教育、小大連携教育の実践、高大連携教育の実践、探求型地域教育
文科省の学習指導要領(以下、「指導要領」)では、現場教員の裁量による柔軟な探究授業の立案が推奨されている。さらに、2020年からは、ギガスクール構想の本格的な運用に伴い、「弾力的で横断的な教育」の幅を広げるための教育環境が整備されつつある。小学校や高等学校では、「総合的な学習の時間」や「地理総合」において教科横断的な探究授業の実践が求められている。一方で、学校教育の現場では授業準備のための時間の確保も困難なほど多忙な実態があり、指導要領が期待するような授業の実施が事実上難しい場合もある。この状況を解決する一つの手法として「多機関連携による授業」があげられるが、現場教員は、「どのように始めればよいのか?」、「どのような利点と欠点があるのか?」などの不安から、その難しさを指摘する声もある。そこで本発表では、演者らが実践してきた横浜市立千秀小学校での小大連携、公文国際学園での高大連携による、地域教育の実践の事例を取り上げ、多機関連携教育の効率的な実践方法、教育効果、課題などを紹介する。「多機関連携による授業」では、教員と地域と連携して活動する専門家(以下、学外者)とのつながりをつくることが初期段階で求められる。そのため、教員自身が校外活動などを通して地域の状況について情報を得られる機会や、学外者が教員向けに自身の取り組みを紹介する機会をつくることが重要である。授業計画は、教員と学外者で十分に練る必要がある。この際に、学外者が授業の目的や計画をまとめた指導案などを提示することで教員との意思疎通が促進される。学外者に授業を任せやすい状況になると、教員も他の業務に時間を割いたり、普段とは異なる視点で連携授業を評価したりできる。実際の授業では、学外者の専門知識の提示のみでなく、探究学習を重視することで、普段は教科学習に苦手意識をもつ児童・生徒が積極的に授業に参加する場合もあり、通常の授業ではわからないような児童・生徒の資質を発見することもできる。授業後も、次年度以降も継続するという相談が可能であったり、学校側から新たな連携を提案されたりするなど、教員と学外者にとってメリットのある展開も期待できる。本発表では、「どのようにして連携のきっかけをつかむのか?」、「具体的にどのような教育効果があるのか?」、「その課題とは何か?」など、現役教員と多機関連携による授業実践の参考となる議論を提示する。