16:15 〜 16:30
[G02-08] Zoomを利用したクラス単位の出前授業とその評価
キーワード:Zoom、遠隔授業
1 研究の背景と目的
地学領域において、オンライン会議システムを利用し、生徒がいる教室と講師がいる会場とをつないだ遠隔授業が、盛んに行われてきた。例えば川村ら(2011)は、科学掘削船ジョイデスレゾリューション号から遠隔授業を行い、その有用性を報告している。しかし、当時のオンライン会議システムは、通信速度の問題やアプリケーション操作の難しさもあり、遠隔授業の実施は困難であった。
一方で、近年では新型コロナウイルスの蔓延に伴い、教育現場にもZoomなどのオンライン会議システムが広く普及した。さらに、GIGAスクール構想により、学校現場における通信環境が、飛躍的に向上した。このような学校環境の変化に伴い、以前よりもより柔軟な形式での遠隔授業が可能となっている。しかし、これらの新しい環境下において、どのような遠隔授業が可能となるのかは、十分な実践の蓄積がなされていない。
そこで、本研究では、以下の2点を目的とした。1点目は、現在の学校環境においてZoomを用いた遠隔授業の手法を開発することである。2点目は、遠隔授業において、生徒がどのような点に着目するのか検証することである。
2 授業実践
授業実践においては、関東圏内の男子中学生3年生の6クラス240名を対象とした。講師にはJAMSTECの木戸ゆかり氏を招聘し、1クラスずつZoomを用いた遠隔授業を行った。木戸ゆかり氏はJAMSTECから、生徒は学校のPCルームから遠隔授業に参加した。なお、生徒は一人一台ずつPCを操作しており、Zoomのチャット機能を利用した質問が可能だった。
3 分析方法
分析には、生徒の事後アンケートを用いた。事後アンケートでは、「オンライン講演会の内容で印象に残ったことを教えてください」という項目を設定した。回答はGoogleフォームを利用して集計した。得られた結果は、KHCoderを利用してテキスト分析を行った。
4 結果と考察
回答に不備のなかった184名から得られた記述に対して、テキスト分析を行った。総抽出語数は1649、異なり語数は588だった。抽出語の頻度を見ると、調査、海底、掘る、船などの語の頻度が多かった。これらのことから、海底調査に関する項目に関して、生徒は印象に残っていたことが示唆され、本遠隔授業の目的が達成されていたと考えられる。また、抽出語に対して、階層的クラスター分析を行った。最小出現数は5とし、併合水準からクラスター数は5に設定した。5つのクラスターをそれぞれ見ると、クラスター1は、地球に関する研究に対する興味を示唆していた。クラスター2は、ドリルで海底に穴を開けるという作業行為に対する感想を示していた。クラスター3は、海底のボーリング調査について評価していることが示唆される。クラスター4は、地震などの語が含まれており、地震の原因を海洋掘削で明らかにできる点について評価していることが示唆される。クラスター5は驚くという語句が見られ、海洋掘削という行為に対する驚きを示唆している。これらのことから、生徒は遠隔授業を受けることにより、海洋掘削に関連する内容に関して、多様な感想を抱いていたことが示唆される。
また、184名の生徒のうち、講演中にチャットを用いて質問した生徒は69人であり、通常の講演会よりも盛んに質問が挙げられていた。本授業実践では、Zoomを利用することにより、1クラスごとの遠隔授業が実現できており、このような環境も生徒の質問行動を誘起したと考えられる。
JAMSTECの木戸ゆかり博士には、授業の実施においてご協力いただいた。また、本研究の一部は、ちゅうでん教育振興財団の助成を受けた。
地学領域において、オンライン会議システムを利用し、生徒がいる教室と講師がいる会場とをつないだ遠隔授業が、盛んに行われてきた。例えば川村ら(2011)は、科学掘削船ジョイデスレゾリューション号から遠隔授業を行い、その有用性を報告している。しかし、当時のオンライン会議システムは、通信速度の問題やアプリケーション操作の難しさもあり、遠隔授業の実施は困難であった。
一方で、近年では新型コロナウイルスの蔓延に伴い、教育現場にもZoomなどのオンライン会議システムが広く普及した。さらに、GIGAスクール構想により、学校現場における通信環境が、飛躍的に向上した。このような学校環境の変化に伴い、以前よりもより柔軟な形式での遠隔授業が可能となっている。しかし、これらの新しい環境下において、どのような遠隔授業が可能となるのかは、十分な実践の蓄積がなされていない。
そこで、本研究では、以下の2点を目的とした。1点目は、現在の学校環境においてZoomを用いた遠隔授業の手法を開発することである。2点目は、遠隔授業において、生徒がどのような点に着目するのか検証することである。
2 授業実践
授業実践においては、関東圏内の男子中学生3年生の6クラス240名を対象とした。講師にはJAMSTECの木戸ゆかり氏を招聘し、1クラスずつZoomを用いた遠隔授業を行った。木戸ゆかり氏はJAMSTECから、生徒は学校のPCルームから遠隔授業に参加した。なお、生徒は一人一台ずつPCを操作しており、Zoomのチャット機能を利用した質問が可能だった。
3 分析方法
分析には、生徒の事後アンケートを用いた。事後アンケートでは、「オンライン講演会の内容で印象に残ったことを教えてください」という項目を設定した。回答はGoogleフォームを利用して集計した。得られた結果は、KHCoderを利用してテキスト分析を行った。
4 結果と考察
回答に不備のなかった184名から得られた記述に対して、テキスト分析を行った。総抽出語数は1649、異なり語数は588だった。抽出語の頻度を見ると、調査、海底、掘る、船などの語の頻度が多かった。これらのことから、海底調査に関する項目に関して、生徒は印象に残っていたことが示唆され、本遠隔授業の目的が達成されていたと考えられる。また、抽出語に対して、階層的クラスター分析を行った。最小出現数は5とし、併合水準からクラスター数は5に設定した。5つのクラスターをそれぞれ見ると、クラスター1は、地球に関する研究に対する興味を示唆していた。クラスター2は、ドリルで海底に穴を開けるという作業行為に対する感想を示していた。クラスター3は、海底のボーリング調査について評価していることが示唆される。クラスター4は、地震などの語が含まれており、地震の原因を海洋掘削で明らかにできる点について評価していることが示唆される。クラスター5は驚くという語句が見られ、海洋掘削という行為に対する驚きを示唆している。これらのことから、生徒は遠隔授業を受けることにより、海洋掘削に関連する内容に関して、多様な感想を抱いていたことが示唆される。
また、184名の生徒のうち、講演中にチャットを用いて質問した生徒は69人であり、通常の講演会よりも盛んに質問が挙げられていた。本授業実践では、Zoomを利用することにより、1クラスごとの遠隔授業が実現できており、このような環境も生徒の質問行動を誘起したと考えられる。
JAMSTECの木戸ゆかり博士には、授業の実施においてご協力いただいた。また、本研究の一部は、ちゅうでん教育振興財団の助成を受けた。