日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG23] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2024年5月28日(火) 15:30 〜 17:00 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:菊地 一輝(中央大学 理工学部)、池田 昌之(東京大学)、川村 喜一郎(山口大学)、清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)、座長:菊地 一輝(中央大学 理工学部)、清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)、池田 昌之(東京大学)、川村 喜一郎(山口大学)

16:30 〜 16:45

[HCG23-10] 男鹿半島一ノ目潟の年縞堆積物に挟まれるイベント堆積物の特徴

*永田 篤規1梅田 浩司1梶田 展人2安藤 卓人3 (1.国立大学法人 弘前大学大学院地域共創科学研究科、2.国立大学法人 弘前大学大学院理工学研究科、3.国立大学法人 秋田大学大学院国際資源学研究科 )

キーワード:一ノ目潟、タービダイト、イベント堆積物

湖底堆積物に見られる年縞は,周辺の植生や地質や湖の水文学および生物学的な季節変動を反映させながら一年毎に形成される.そのため,周辺地域の環境変動を精密に記録していることが期待される.さらに,年縞堆積物には過去の地震に起因するタービダイト等のイベント堆積物や地層の変形・擾乱が挟在する場合があり,それらは年単位の時間軸に基づく自然災害の復元に利用できる可能性がある.
 男鹿半島に位置する一ノ目潟には,少なくとも過去3万年分の年縞が堆積していることが,(Okuno et al., 2011)によって明らかにされている.本研究では一ノ目潟の湖底堆積物コアに含まれるイベント層から,日本海東縁部で過去に発生した地震を含むイベントの特定やその発生時期を識別することを試みた.一ノ目潟の中心の湖底から32.5 cmの堆積物コアを採取し,層相観察および年縞の本数を計測した.その結果,年縞が現在も1年毎に形成されていること,採取したコアの中に年縞とは堆積構造が異なる4つのイベント層(E1,E2,E3,E4)が含まれることを確認した.これらの結果と秋田県の災害年表を照合し,E1,E2,E3,E4がそれぞれ1983年日本海中部地震,1979年の大雨イベント,1964年男鹿半島沖地震,1955年の大雨イベントに対応していることを明らかにした.
 年縞層とイベント層について粒度分析を行った結果,両者では粒度分布が大きく異なっており,イベント層ごとにも違いが見られた.地震に起因すると考えられるE1とE3と,大雨に起因すると考えられるE2とE4では,粒度分布が異なっていた.さらに,イベント層の供給源を特定するため,湖底斜面の表層堆積物や,一ノ目潟に流入する河川の河床堆積物の粒度分析を行った.その結果,地震によるイベント層と湖底斜面の表層堆積物,大雨によるイベント層と流入河川に含まれる土砂で,それぞれ粒度分布が類似していた.したがって,地震イベント層は表層堆積物の二次堆積物,大雨イベント層は河川から流入した堆積物を起源とすることが示唆された.今回の研究によって,一ノ目潟の堆積物コアから過去3万年分の地震や大雨などの自然災害を読み解くことが期待できる.