日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG23] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2024年5月28日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:菊地 一輝(中央大学 理工学部)、池田 昌之(東京大学)、川村 喜一郎(山口大学)、清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)

17:15 〜 18:45

[HCG23-P07] チベット高原南端の中新統~更新統の堆積環境と気候条件の変遷:古土壌による気候区の検討

*島田 誠明1吉田 孝紀1、ギャワリ バブラム2,3 (1.信州大学、2.トリブバン大学、3.ポカラ大学)

キーワード:古土壌、古気候、中新世~更新世、南アジア・モンスーン、チベット高原、中央ネパール

インド亜大陸とユーラシアプレートの衝突によって隆起したヒマラヤ,チベット高原の形成は,アジアのモンスーン気候の成立と変動に大きな影響を及ぼした.ヒマラヤ山脈とチベット高原の境界には南北に走る地溝が分布する.この内の一つ,タコーラ地域は周囲の山脈により南西モンスーン風が遮られ,雨陰となることで乾燥し,現在はステップ気候に区分される.このタコーラ地域には新第三系から第四系の扇状地性・河川性・湖沼性の陸成層が分布し,これに挟まれる古土壌はチベット高原の形成や隆起によるモンスーン気候の成立や気候区の変遷を記録していることが期待される.上部中新統から鮮新・更新統のThakkhola層について堆積相解析と古土壌学的検討を行い,チベット高原南端における気候区の変遷を追跡する.なお土壌層位については,有機物が集積した暗灰色の土層であるA層,A層の下位に発達する粘土が集積したB層,B層内部でより粘土が集積したBt層,初生的な構造を残すC層に分類した.
本研究地域に分布するThakkhola 層では大まかに下部より,礫が優勢な網状河川堆積物,蛇行河川堆積物,シルト岩を挟む礫が優勢な網状河川堆積物,礫から砂が優勢な網状河川堆積物,砂が優勢な網状河川堆積物に区分される.またこれら陸成層中に発達する古土壌を対象に古環境復元を行った.シルト岩を挟む礫が優勢な蛇行河川堆積物や氾濫原堆積物の古土壌は,A,Bt,B層への土層分化,鉄酸化物で置換された細根によって特徴づけられ,グライ化したInceptisol(若年期の土壌)に相当する.礫から砂が優勢な網状河川堆積物の古土壌は,Bt,B層への土層分化,鉄酸化物で暗褐色を呈する層,粒子周囲の不透明鉱物被膜に特徴づけられ,Inceptisolに分類される.砂が優勢な網状河川堆積物の古土壌は,根の周囲に炭酸カルシウムが析出したリゾリスで特徴づけられ,Entisol(最初期の土壌)に分類される.明瞭な土層分化は温暖な気候条件を,リゾリスの形成は乾燥した気候条件をそれぞれ示す.よって上部中新統から更新統のThakkhola 層では礫が優勢な網状河川から,より砂が優勢な網状河川へ変化し,現在の当地域と比べて温暖な気候条件から,より乾燥した気候条件へ変化したことが示唆される.中新世以降のヒマラヤ,チベット高原の隆起による標高の変化,雨陰の成立などが地域的な気候を変化させた一因であると考えられる.