17:15 〜 18:45
[HCG24-P01] 絶対嫌気的な共培養で実現する光合成メタン生成
★招待講演
キーワード:光合成、緑色硫黄細菌、ヒドロゲナーゼ、水素発生、メタン菌、共培養
緑色硫黄細菌は偏性嫌気性の光独立栄養細菌であり,還元型の硫黄化合物を電子源とした酸素非発生型の光合成で増殖する。モデル種であるChlorobaculum tepidumでは任意の遺伝子の改変や導入が容易であり,酸素存在下では容易に不活性化してしまう嫌気性タンパク質の発現ホストとしての利用が期待されている。その中でも特に酸素感受性の高いタンパク質として,プロトン還元を触媒する酵素である[FeFe]型ヒドロゲナーゼがよく知られている。触媒中心として働く特異的な鉄錯体であるHクラスターが酸素で容易かつ不可逆的に崩壊してしまうため,[FeFe]型ヒドロゲナーゼは生合成から機能発現に至るまで,完全に嫌気的な環境を要求する。発表者らは,過去の研究において,緑藻由来の[FeFe]型ヒドロゲナーゼであるHydA1を,その特異的成熟化タンパク質と共にC. tepidumに強制発現させ,その光合成培養から大量の水素ガスを発生させることに成功している。
ホロ型HydA1を強制発現したC. tepidumは,水素発生を高収率で実現できる光合成水素生成系である。しかし,水素ガスはエネルギー密度が低くく,また炭素化合物ではないため,C. tepidumの光合成水素生成系は炭素の貯蔵や大気CO2の削減に直接的には寄与しない。そこで発表者らは,C. tepidumの光合成水素生成系で発生する大量の水素ガスを,古細菌の一群であるメタン菌が有する特異的な代謝系である異化的CO2還元系でメタンに変換することを考えた。メタン菌の異化的CO2還元系は,水素を電子源として酸化し,CO2を異化的にメタンに還元する。しかし,メタン菌の異化的CO2還元系は,多数の特異的な酵素と補因子から成る,大規模で複雑な代謝経路であり,遺伝子の異種発現によるC. tepidumへの移植は現実的ではない。この問題を克服するべく,ホロ型HydA1を発現するC. tepidumとメタン菌のモデル種であるMethanococcus maripaludisを閉鎖系で独立栄養的に共培養し,それぞれの菌株が有する特異的な代謝系を,水素ガスを媒介物質として共役させることを試みた。
ホロ型HydA1を強制発現したC. tepidumは,水素発生を高収率で実現できる光合成水素生成系である。しかし,水素ガスはエネルギー密度が低くく,また炭素化合物ではないため,C. tepidumの光合成水素生成系は炭素の貯蔵や大気CO2の削減に直接的には寄与しない。そこで発表者らは,C. tepidumの光合成水素生成系で発生する大量の水素ガスを,古細菌の一群であるメタン菌が有する特異的な代謝系である異化的CO2還元系でメタンに変換することを考えた。メタン菌の異化的CO2還元系は,水素を電子源として酸化し,CO2を異化的にメタンに還元する。しかし,メタン菌の異化的CO2還元系は,多数の特異的な酵素と補因子から成る,大規模で複雑な代謝経路であり,遺伝子の異種発現によるC. tepidumへの移植は現実的ではない。この問題を克服するべく,ホロ型HydA1を発現するC. tepidumとメタン菌のモデル種であるMethanococcus maripaludisを閉鎖系で独立栄養的に共培養し,それぞれの菌株が有する特異的な代謝系を,水素ガスを媒介物質として共役させることを試みた。