09:00 〜 09:15
[HDS10-01] 不確実性の高い地震情報の認識状況と課題
:南海トラフ地震臨時情報と北海道・三陸沖後発地震注意情報の現状
日本では東海地震を対象とした地震予知にもとづく防災体制が2017年に見直され、地震前の情報として南海トラフ地震を対象とした不確実性の高い「臨時情報」が導入された。さらに2022年には千島海溝・日本海溝の地震を対象に、類似点が多い「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の運用も開始された。両情報は、地震予知ではないことが説明され、とるべき防災体制について定められた「ガイドライン」でも特別な条件の場合以外は、日頃の防災対策の再確認や避難の準備といった対応のみが求められている。さらに、防災体制を終了する時期については、観測に基づく科学的判断は不可能であることから、社会の受忍限度にもとづいて1週間とすることがあらかじめ定めらた。
2024年2月時点では両情報とも、発表されたことはない。そもそもM8クラスを超える特定の地震を対象に地震情報を出す場合、的中する機会は数十年から数百年に一度しかないので、かなりの回数の「空振り」を見込んだとしても、情報が発表される機会は多いものにはなりえない。
このような状況にあるため、この2つの情報は存在そのものが知られておらず、その広報と普及が課題となっている(内閣府, 2023など)。そこで、我々は情報の認知度と防災対応の状況を市民レベルで明らかにするため、インターネットによるアンケート調査を実施した。南海トラフ地震臨時情報については、2023年7月に調査を行い、東京・静岡・愛知・大阪・広島・徳島・高知・宮崎の8都府県3200名から回答を得た(大谷・林, 2024)。
北海道・三陸沖後発地震注意情報については、2023年11月に調査を行い、北海道内の札幌・旭川・函館・苫小牧・帯広・釧路の6都市圏1800名から回答を得た(林・他, 2024)。
情報の認知度について「インターネットなどで確認し、よく知っている」「テレビ番組の解説などで、どのような情報か聞いたことがある」「耳にしたことはあるが、具体的にどのような情報かはわからない」「知らない」の4段階で評価したところ、南海トラフ地震臨時情報では上から、15.1%、29.5%、33.8%、21.6%となった。北海道・三陸沖後発地震注意情報では、9.9%、17.8%、30.2%、40.2%となった。上位2つの合計は、「南海トラフ」では44.6%と約半分に達するが、「北海道」では27.7%と3割に達しない低さであった。なお、両情報とも、都府県または都市による極端な差は見られなかった。
いずれの情報も、情報発表後に推奨される防災対応は日頃の準備の再確認などに限定されるが、情報の存在そのものが知られていない状況で突然発表された場合に、市民がどのような行動は予想ができない。アンケート調査の中では、仮想的な想定確率を複数用意し、その確率であることが事前にわかっていた場合の対応行動についても聞いた。内閣府のガイドラインが推奨する、「家族との話し合い」や「非常持ち出し品の確認」は確率が50%という極端に高い想定でも実施率は6割程度にとどまった。一方、「会社や学校を休む」「地域の避難所へ行く」という推奨されていない行動をとると回答した人は80%という高い確率では2割程度存在した。また、推奨される避難行動を実施するという選択は、日頃からの防災対策の実施が進んでいる人で高くなる傾向が見られた。
以上のことから、情報の内容の丁寧な説明と、推奨される防災行動を定着させるための繰り返しの周知が必要であると考えられる。
2024年2月時点では両情報とも、発表されたことはない。そもそもM8クラスを超える特定の地震を対象に地震情報を出す場合、的中する機会は数十年から数百年に一度しかないので、かなりの回数の「空振り」を見込んだとしても、情報が発表される機会は多いものにはなりえない。
このような状況にあるため、この2つの情報は存在そのものが知られておらず、その広報と普及が課題となっている(内閣府, 2023など)。そこで、我々は情報の認知度と防災対応の状況を市民レベルで明らかにするため、インターネットによるアンケート調査を実施した。南海トラフ地震臨時情報については、2023年7月に調査を行い、東京・静岡・愛知・大阪・広島・徳島・高知・宮崎の8都府県3200名から回答を得た(大谷・林, 2024)。
北海道・三陸沖後発地震注意情報については、2023年11月に調査を行い、北海道内の札幌・旭川・函館・苫小牧・帯広・釧路の6都市圏1800名から回答を得た(林・他, 2024)。
情報の認知度について「インターネットなどで確認し、よく知っている」「テレビ番組の解説などで、どのような情報か聞いたことがある」「耳にしたことはあるが、具体的にどのような情報かはわからない」「知らない」の4段階で評価したところ、南海トラフ地震臨時情報では上から、15.1%、29.5%、33.8%、21.6%となった。北海道・三陸沖後発地震注意情報では、9.9%、17.8%、30.2%、40.2%となった。上位2つの合計は、「南海トラフ」では44.6%と約半分に達するが、「北海道」では27.7%と3割に達しない低さであった。なお、両情報とも、都府県または都市による極端な差は見られなかった。
いずれの情報も、情報発表後に推奨される防災対応は日頃の準備の再確認などに限定されるが、情報の存在そのものが知られていない状況で突然発表された場合に、市民がどのような行動は予想ができない。アンケート調査の中では、仮想的な想定確率を複数用意し、その確率であることが事前にわかっていた場合の対応行動についても聞いた。内閣府のガイドラインが推奨する、「家族との話し合い」や「非常持ち出し品の確認」は確率が50%という極端に高い想定でも実施率は6割程度にとどまった。一方、「会社や学校を休む」「地域の避難所へ行く」という推奨されていない行動をとると回答した人は80%という高い確率では2割程度存在した。また、推奨される避難行動を実施するという選択は、日頃からの防災対策の実施が進んでいる人で高くなる傾向が見られた。
以上のことから、情報の内容の丁寧な説明と、推奨される防災行動を定着させるための繰り返しの周知が必要であると考えられる。
