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[HDS10-P13] 愛知県岡崎市における令和5年6⽉⼤⾬災害への対応とその課題
キーワード:大雨災害、緊急対応、避難行動、令和5年6⽉⼤⾬
2023年6月1日から3日かけて梅雨前線及び台風第2号により発生した大雨では,西日本から東日本にかけて6月としては記録的な雨をもたらし,全国で8人の犠牲者と1万棟以上の住家被害を出した.本研究の対象である愛知県岡崎市では,2日を中心に記録的な降水量となり,400棟近い住家被害を出したが,人的被害は発生せず比較的小規模な災害にとどまった.本研究では,岡崎市防災課や消防本部のほか,都市化の度合いや水害履歴の異なる市内2浸水地区(保母町,矢作町)の町内会長らへの聞き取り調査を行い,発災時における事態の推移を時系列的に整理した.当市では過去最大規模の日降水量を記録し,2日昼以降各地に避難指示が発令され,実際に浸水被害も発生,夕方には矢作川の水位上昇により高齢者等避難情報が発令されたが,実際に避難した人はわずかだった.結果的に人的被害が発生しなかったのは,降雨が一定程度でとどまったからだと考えられ,降雨状況が予想できない時点での対応としては課題が残った.また調査を行った2地区では浸水及び被害状況は異なったが,住民らの避難や財産保護などの災害への対応は,基本的に過去の経験に基づいたものである点で共通していた.一方,行政からの避難情報は,基本的に気象庁等の外部専門機関からの情報に基づいていたが,実際の浸水地域を網羅できず,また発令時期にも問題があったほか,避難場所の立地や運営方法にも問題があった.このように小規模災害は,微細に地域差を伴いながら刻一刻と状況が変化するなかで,避難を含む,地域社会の緊急対応の難しさをよく示しており,防災リテラシー上の教訓を得る重要な機会だと考えられる.
