15:30 〜 15:45
[HDS11-11] ライブカメラ映像から抽出した2024年能登半島地震の高岡市雨晴海岸における津波時系列データ
キーワード:津波、画像解析、令和6年能登半島地震
はじめに:
2024年1月1日16時10分頃に発生した能登半島の地震(M7.6)による津波は、能登半島をはじめとした日本海の各地の沿岸で観測された。その中で富山検潮所に津波が早く到達しており、地震に伴う地殻変動以外に富山湾に新たな津波源が存在した可能性を示唆している(対馬・他, 2024, 本大会)。本研究では、ライブカメラの画像を解析し、検潮所以外の富山湾沿岸の津波に関するより詳細な情報を得ることにした。
データと手法:
富山県高岡市の雨晴海岸にある、高岡ケーブルネットワークが所有するライブカメラの映像を入手し、そのビデオデータから津波波形記録の抽出を行った。この映像は雨晴駅付近に設置されている固定のライブカメラから、雨晴海岸を同じ画角で常時遠景でとらえた映像である。これらのビデオデータを1分毎の画像に変換し、現地調査で計測した海岸付近の岩の高さと画像に写っている岩の高さとの比較からピクセルあたりの高さを計算した。次に、各画像での津波(水面)が到達したピクセルを人間の目で読み取り、そのピクセル数と上記の1ピクセル当たりの高さからその時間での津波高さを求めた。
結果:
津波到達直前の水位を基準として、日没までの雨晴海岸における水位時系列データを抽出できた(Fig.1)。日没後は暗闇により、画像から海面を判定することはできなかった。Fig.1では、抽出したデータと、雨晴海岸から直線距離で約3kmの伏木港検潮所(港湾局)のデータと比較した。ビデオデータからの抽出したデータと伏木港とで概ね似通った波形をしているが、雨晴海岸の方がやや波高が大きい傾向にあった。
議論と今後の課題:
本研究で抽出した雨晴海岸と伏木港での観測値を比較すると、最大波高が、雨晴海岸で1.0m、伏木港検潮所で0.8mであった。この違いは、前者が湾に直接面しているのに比べて、後者が小矢部川河口に位置していることが関連している可能性がある。また津波の第一波の到着は地震発生から、富山検潮所で3分、伏木港検潮所で4分、雨晴海岸で7分だと判明したことは、富山湾に示唆されている追加的な津波波源の位置を分析する上で重要な成果である。ビデオデータから得る時系列水位波形を加えることで、既存の津波観測所の観測値を補い、観測値の空間密度を高められる。沿岸で映像を配信しているライブカメラは多数あり、他の地点や他の事例でも今回の方法は適用できる。本研究では、夜間のデータを取得できなかったが、高感度カメラの利用や、観測対象とする場所を投光することが出来れば、夜間のデータも利用可能であろう。また、本研究のデータ抽出の手順は、AIを用いた画像の自動認識などによって自動化できる可能性もある。これらの条件が整えば、ライブカメラによる津波のリアルタイム監視が可能になる。沿岸での潮位計や水圧計を用いた通常の津波観測に比べて、ビデオカメラは設備も簡易で済み、安価に多点での津波観測網を実現できる可能性を秘めている。
謝辞:今回利用した映像は高岡ケーブルネットワークより提供いただいた。本研究の一部は、JSPS科研費JP23K17482の助成を受けている。
2024年1月1日16時10分頃に発生した能登半島の地震(M7.6)による津波は、能登半島をはじめとした日本海の各地の沿岸で観測された。その中で富山検潮所に津波が早く到達しており、地震に伴う地殻変動以外に富山湾に新たな津波源が存在した可能性を示唆している(対馬・他, 2024, 本大会)。本研究では、ライブカメラの画像を解析し、検潮所以外の富山湾沿岸の津波に関するより詳細な情報を得ることにした。
データと手法:
富山県高岡市の雨晴海岸にある、高岡ケーブルネットワークが所有するライブカメラの映像を入手し、そのビデオデータから津波波形記録の抽出を行った。この映像は雨晴駅付近に設置されている固定のライブカメラから、雨晴海岸を同じ画角で常時遠景でとらえた映像である。これらのビデオデータを1分毎の画像に変換し、現地調査で計測した海岸付近の岩の高さと画像に写っている岩の高さとの比較からピクセルあたりの高さを計算した。次に、各画像での津波(水面)が到達したピクセルを人間の目で読み取り、そのピクセル数と上記の1ピクセル当たりの高さからその時間での津波高さを求めた。
結果:
津波到達直前の水位を基準として、日没までの雨晴海岸における水位時系列データを抽出できた(Fig.1)。日没後は暗闇により、画像から海面を判定することはできなかった。Fig.1では、抽出したデータと、雨晴海岸から直線距離で約3kmの伏木港検潮所(港湾局)のデータと比較した。ビデオデータからの抽出したデータと伏木港とで概ね似通った波形をしているが、雨晴海岸の方がやや波高が大きい傾向にあった。
議論と今後の課題:
本研究で抽出した雨晴海岸と伏木港での観測値を比較すると、最大波高が、雨晴海岸で1.0m、伏木港検潮所で0.8mであった。この違いは、前者が湾に直接面しているのに比べて、後者が小矢部川河口に位置していることが関連している可能性がある。また津波の第一波の到着は地震発生から、富山検潮所で3分、伏木港検潮所で4分、雨晴海岸で7分だと判明したことは、富山湾に示唆されている追加的な津波波源の位置を分析する上で重要な成果である。ビデオデータから得る時系列水位波形を加えることで、既存の津波観測所の観測値を補い、観測値の空間密度を高められる。沿岸で映像を配信しているライブカメラは多数あり、他の地点や他の事例でも今回の方法は適用できる。本研究では、夜間のデータを取得できなかったが、高感度カメラの利用や、観測対象とする場所を投光することが出来れば、夜間のデータも利用可能であろう。また、本研究のデータ抽出の手順は、AIを用いた画像の自動認識などによって自動化できる可能性もある。これらの条件が整えば、ライブカメラによる津波のリアルタイム監視が可能になる。沿岸での潮位計や水圧計を用いた通常の津波観測に比べて、ビデオカメラは設備も簡易で済み、安価に多点での津波観測網を実現できる可能性を秘めている。
謝辞:今回利用した映像は高岡ケーブルネットワークより提供いただいた。本研究の一部は、JSPS科研費JP23K17482の助成を受けている。