日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM03] 地形

2024年5月28日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:岩橋 純子(国土地理院)、齋藤 仁(名古屋大学 大学院環境学研究科)、高波 紳太郎(明治大学)、Newman R Newman(Hokkaido University)


17:15 〜 18:45

[HGM03-P07] 流域の水文地形情報を用いた「日本の滝100選」における滝面の形状分類の再評価

*井上 晃汰1小倉 拓郎1早川 裕弌2高波 紳太郎3 (1.兵庫教育大学大学院学校教育研究科、2.北海道大学地球環境科学研究院、3.明治大学文学部)

キーワード:滝、形状分類、オープンデータ、日本の滝100選

「日本の滝100選」では全国から一般公募によって歴史的・文化的背景を有する滝を選定しており,滝が流れ落ちる形状の特徴や地質などをまとめ,観光に利用されている(図1-a).地形学において滝は遷急点と呼ばれ,河床勾配が上流から下流に向かって不連続に急増する点である.先行研究では,特定の対象地における滝の形成過程や滝の後退速度を検討したものが挙げられる.しかし,全国規模で滝が形成される流域の水文地形情報を統合的に集約し分析した事例はない.また,先述の「日本の滝100選」では,滝の形状等を6つに類型化しているが,地形学や水文学に基づいた分類ではない.したがって,滝を形成する水文地形情報からローカルな滝面の形状への影響が及ぶかどうかを明らかにすることは,滝の形態そのものの理解につながる.そこで,本研究は,滝を含む流域の水文地形情報を解析し,本研究の結果と日本の滝100選における滝の形状分類と比較した.その上で,日本の滝100選における滝の形状分類が地形学や水文学的に説明できる分類であるかを再検討する.
 本研究では,滝上流の集水面積,年平均降水量などの水文情報および標高,平均傾斜角,地質条件などの地形情報をGISで統合し,滝を構成する流域の特徴を整理した.算出した流域の集水面積と年平均降水量の積で流量の推定値を算出した。また,「日本の滝100選」で選定されている滝の形状をインターネットで公開されている写真および現地調査で観察し,形状分類をさらに細分化した.
 「日本の滝100選」で選定されている滝の形状として挙げられる直瀑は,他の形状分類と比較して流域の集水面積が大きい傾向にあり、火成岩や火山砕屑岩の割合が大きい。また,写真と現地調査により,段瀑については滝面が階段状の形状と段ごとに滝つぼが形成されている形状の2つに分類した.滝面が階段状の段瀑は流域の流量が平均値より小さい傾向にあり,火成岩や火山砕屑岩の割合が大きい.段ごとに滝つぼが形成されている段瀑は流域の流量が平均値より大きい傾向にあり,堆積岩の割合が大きい.さらに,分岐瀑は写真と現地調査により,遷急点から水が落下するにつれて滝面の幅が広がる分岐瀑と遷急点で分岐している分岐瀑の2つに分類した.分岐瀑全体はほかの形状と比較して流域の集水面積に対する流量が大きい傾向にあり,火成岩・火山砕屑岩の割合が大きい.その中でも遷急点で分岐している分岐瀑は,遷急点から水が落下するにつれて滝面の幅が広がる形状より流域の年平均降水量が平均値よりも大きい傾向があった.(図1-b)
 本研究では「日本の滝100選」の形状分類は水文地形情報による異なった傾向が明らかになった.本研究の結果をもとに滝面の形状を詳細に三次元計測を行い,滝面の形状が異なる要因を検討する必要がある.