[H-GM03] 地形

[HGM03-P11] 基盤岩を構成材料とするステップｰプールの形成条件と発達過程

*荒井 悠希¹、高橋 直也¹ (1.東北大学大学院理学研究科地学専攻)

キーワード：ステップｰプール、基盤岩、山地河川

山地河川の段状河床には，河川水のエネルギー減衰効果や河岸の安定化などの役割があることが知られている．段状河床のうち，階段状形態をなすステップｰプールの構成材料には，礫，倒木や枝葉，基盤岩がある．礫ステップの形成条件や発達過程が明らかにされつつある一方で，基盤岩ステップに関する知見は限られている．これまでの研究によって礫と基盤岩ステップの形態的特徴や，河川水のエネルギー減衰の役割に大きな違いはないことがわかっている．しかし，基盤岩ステップと礫ステップでは構成材料が異なるため，形成・発達過程が同じとは限らない．このような背景から本研究では，基盤岩ステップ-プールの現地計測を行い，礫ステップの形成理論が基盤岩ステップにも適用可能かどうか，また，基盤岩ステップの発達過程について検討した．
　主に凝灰岩，凝灰角礫岩が分布する宮城県名取市の増田川，主にスレート・砂質頁岩が分布する宮城県石巻市の内の原川の2つの河川において，各ステップ-プールのステップ高，ステップ間隔，ステップ差高の計測，及び位置の記録を行った．増田川では，ステップ間隔3–4 m程度まではステップ間隔とステップ高の比（H/L）が0.27程度であった．ステップ間隔がより大きくなると，H/Lは必ずしも一定ではなく，滝のように高さがより大きいものや，間隔が高さよりも顕著に大きいものも見られた．また，基盤岩ステップの形成条件を検討するために，約100 m間隔で高水時の川幅と水深を計測し，マニング式を用いて流速を求めることで，フルード数を推定した．その結果，既存研究で示された礫ステップ形成条件のうち，本研究で計測した基盤岩ステップに適用可能なものは，キーストーン理論であることがわかった．キーストーン理論では，河道内の巨礫の上流により小さい礫が停滞することで，縦断方向の侵食速度に差が生まれ，ステップが形成される．この理論に基づいてステップｰプールが形成された後に，高水時に礫が流出することで，基盤岩が露出し，基盤岩ステップが形成されると推察される．
　ステップ計測結果から，ステップが小さいうちは一定の割合で間隔と高さが増し，その後，間隔と高さが同じ割合で成長するもの，滝のようになるもの，高さが成長しないものの3つに分かれることが示唆される．既存研究から，基盤岩上の滝の成長・消滅には縦断方向の侵食速度の差が重要であることがわかっている．これは基盤岩ステップでも同じと推察され，この3種類の発達はステップ上流側，ステップ，プールにおける縦断方向の侵食速度の大小で説明される．ただし，形成条件や発達過程はステップやプール形状によって左右される可能性があるため，ステップの横断方向の幅やステップ頂点からプール最深部までの水平距離などをふまえて更に検討する必要がある．