日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR05] 第四紀:ヒトと環境系の時系列ダイナミクス

2024年5月30日(木) 09:00 〜 10:30 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:白井 正明(東京都立大学)、横山 祐典(東京大学 大気海洋研究所 )、吾妻 崇(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、里口 保文(滋賀県立琵琶湖博物館)、座長:白井 正明(東京都立大学)、石輪 健樹(国立極地研究所)

09:15 〜 09:30

[HQR05-02] 火山ガラスのWDS分析からみた土器製作への火山灰利用 ~中米・エルサルバドル、チャルチュアパ地域のウスルタン様式土器の分析事例~

*北村 繁1、村野 正景2 (1.新潟大学教育学部、2.京都府京都文化博物館)

キーワード:X線マイクロプローブアナライザー、ウスルタン様式土器、アルセーテフラ、コアテペケカルデラ

火山地域では、土器材料のひとつとして火山灰を用いることが少なくない。このため、土器胎土に含まれる火山ガラスの化学組成をX線マイクロアナライザーで分析し、土器製作に用いられた火山灰層を明らかにすることで、土器の生産地や制作方法など、考古学的に極めて重要な知見を得られる可能性が高い。Kitamura(2022)は、中米・エルサルバドル共和国西部・チャルチュアパ遺跡ラ・クチーヤ地区で出土した「ウスルタン様式土器」の胎土に含まれる火山ガラスの化学組成をWDS(波長分散型X線マイクロアナライザー)で分析し、近隣のコアテペケカルデラを起源としてチャルチュアパ周辺に分布するアルセー・テフラ(Arce Tephra;72ka)が土器胎土に含まれることを明らかにするとともに、アルセーテフラが土器製作に選択的に利用されている可能性を示した。
一方、アルセー・テフラについては、Kitamura(2017)が3つの部層に区分し、部層により火山ガラスの化学組成が異なることを示したが、Kutterolfほか(2020)では10の部層に区分し、部層ごとの化学組成を明らかにしている。そこで、本研究では、Kutterolfほか(2020)が示したアルセー・テフラの10の部層、および、ラ・クチーヤ地区出土のウスルタン様式土器の土器胎土中の火山ガラスを弘前大学共用機器基盤センターのWDS(JEOL JXA-8230)を用いて分析し、両者の比較を行った。
その結果、土器胎土中の火山ガラスはバイモーダルな組成を示し、アルセー・テフラの中位部層(Unit V)および下部層(Unit ⅢおよびⅣ)とよく一致した。また、アルセーテフラの最上位の部層(Unit ⅨおよびⅩ)は、おおむねユニモーダルな化学組成を示したが、土器胎土中の火山ガラスのモードのひとつと一致が良かった。アルセー・テフラの中位部層(Unit V)と最上位の部層(Unit ⅨおよびⅩ)は細粒火山灰を含むため、粗粒な軽石層(UnitⅥ~Ⅷなど)よりも土器製作に利用しやすかった可能性がある。