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[HQR05-09] 高知県浦ノ内湾における人新世の重金属濃度変動とその起源
キーワード:人新世、内湾、重金属、鉛同位体、環境変化
「人新世(Anthropoce)」と提唱されている地質年代(Crutzan, 2002)は、人間が地球環境に負荷を与えてきた記録が残されている。内湾は、人間活動による環境変化を詳細に記録している場所であり、海底堆積物から「人新世」以前とその後の人為的な影響がある時代を連続で分析することが可能である。高知県中央部に位置する浦ノ内湾は、湾口が狭く、東西に12Kmの細長い地形を持つ沈降性の内湾であり、現在、魚類の養殖も盛んに行われている。本発表では,浦ノ内湾の海底堆積物中に記録されている人新世における重金属の濃度変化とその起源について明らかにすることを目的とした.
浦ノ内湾の湾奥(U-1:水深9.7 M)で採取されたシルト泥である海洋コアを用いて、XRFコアスキャナー(ITRAX)分析,プラズマ誘導質量分析(ICP-MS)、マルチコレクター誘導結合プラズマ質量分析計(MC-ICP-MS)を行い、海底堆積物の重金属元素濃度変化と鉛同位体比によるそれらの起源の検証を行った。海洋コアの年代は,放射性同位体(210Pb,137Cs)から見積もった.1954年(25cm)から1964年(20cm)にかけて,重金属元素は,それ以前の時代と比べ急激に濃度が増加していた.非破壊,高精度,高分解能で測定ができるXRFコアスキャナー(ITRAX)とICP-MSの分析結果を比較した.両分析は,全体的な増加傾向は似ていたが,重金属元素の濃度が増加し始める深度の決定はICP-MS分析でおこない,1954年頃から,人為起源の重金属が増加しはじめたことが明らかになった. ITRAXでは,X線によるコア試料のバルクの全元素をカウント値で測定しており,ICP-MSでは,前処理において,堆積物試料の表面に付着していた重金属を抽出して測定した結果の違いがあると考えられる.全鉛同位体比(206Pb/204Pb, 207Pb/204Pb, 208Pb/204Pb, 207Pb/206Pb, 208Pb/206Pb 比)とAl/Pbのmixing diagramから,浦ノ内湾のPbの供給源は, 1950年代以前の古い時代では,鉛含有量が少なく鉛同位体比が高い端成分1,1950年代以降は,鉛含有量が多く鉛同位体比が低い端成分2の2つの起源を示す直線関係になった.本結果を,西南日本外帯から採取された河川堆積物の鉛同位体比のデータをまとめた図(Saito et al, 2020)にプロットしたところ,端成分1は,近隣の仁淀川河口のプロット位置に近く,また,端成分2は,プロットされた位置にはデータが無いため,人為的にもたらされた可能性が高いと考えられる.世界的な鉛鉱石の産出国である中国(Hsu and Sabatini, 2019)やオーストラリア(Huston and Champoin, 2023)の鉱石には、浦ノ内湾試料の鉛の端成分2と同様な特徴(206Pb/204Pbに対し207Pb/204Pbが高い)を示すものが存在する。そのため、これらの国から輸入された鉱石の利用に伴い、人為的に排出された鉛が端成分2である可能性が高いと考えられる。
浦ノ内湾の湾奥(U-1:水深9.7 M)で採取されたシルト泥である海洋コアを用いて、XRFコアスキャナー(ITRAX)分析,プラズマ誘導質量分析(ICP-MS)、マルチコレクター誘導結合プラズマ質量分析計(MC-ICP-MS)を行い、海底堆積物の重金属元素濃度変化と鉛同位体比によるそれらの起源の検証を行った。海洋コアの年代は,放射性同位体(210Pb,137Cs)から見積もった.1954年(25cm)から1964年(20cm)にかけて,重金属元素は,それ以前の時代と比べ急激に濃度が増加していた.非破壊,高精度,高分解能で測定ができるXRFコアスキャナー(ITRAX)とICP-MSの分析結果を比較した.両分析は,全体的な増加傾向は似ていたが,重金属元素の濃度が増加し始める深度の決定はICP-MS分析でおこない,1954年頃から,人為起源の重金属が増加しはじめたことが明らかになった. ITRAXでは,X線によるコア試料のバルクの全元素をカウント値で測定しており,ICP-MSでは,前処理において,堆積物試料の表面に付着していた重金属を抽出して測定した結果の違いがあると考えられる.全鉛同位体比(206Pb/204Pb, 207Pb/204Pb, 208Pb/204Pb, 207Pb/206Pb, 208Pb/206Pb 比)とAl/Pbのmixing diagramから,浦ノ内湾のPbの供給源は, 1950年代以前の古い時代では,鉛含有量が少なく鉛同位体比が高い端成分1,1950年代以降は,鉛含有量が多く鉛同位体比が低い端成分2の2つの起源を示す直線関係になった.本結果を,西南日本外帯から採取された河川堆積物の鉛同位体比のデータをまとめた図(Saito et al, 2020)にプロットしたところ,端成分1は,近隣の仁淀川河口のプロット位置に近く,また,端成分2は,プロットされた位置にはデータが無いため,人為的にもたらされた可能性が高いと考えられる.世界的な鉛鉱石の産出国である中国(Hsu and Sabatini, 2019)やオーストラリア(Huston and Champoin, 2023)の鉱石には、浦ノ内湾試料の鉛の端成分2と同様な特徴(206Pb/204Pbに対し207Pb/204Pbが高い)を示すものが存在する。そのため、これらの国から輸入された鉱石の利用に伴い、人為的に排出された鉛が端成分2である可能性が高いと考えられる。