17:15 〜 18:45
[HQR05-P01] 青森県野辺地町目ノ越の海食崖で見られる海成層と開析谷の年代と形成過程
キーワード:更新世、野辺地、海成層、谷埋め堆積物
本研究では、下北半島の南部で陸奥湾に面した海食崖で見られる海成層の層序および年代、さらに谷埋め堆積物の形成メカニズムについて、これまでの検討結果を報告する。研究対象としたのは、一般に農業集落地域として野辺地町目ノ越(行政区界としては青森県上北郡野辺地町字向田)と呼ばれている地域で、西方の陸奥湾に向かって緩やかに傾斜した平坦面(標高16~40m)は、MIS5e期に形成された海成段丘である野辺地面に区分される(三浦、1968)。野辺地面を削る海食崖では、段丘の基盤を成す海成層を総延長約1.3 kmにわたって観察することができる。当日は、この海成層を踏査中に発見したテフラ層の理化学分析と谷埋め堆積物の放射年代測定結果に基づいて、海食崖を海上からドローンで連続撮影した写真を合成したオルソ画像を示しながら層位関係を解説する。
海成層中に介在している2層のテフラ層のうち、上位のテフラ層についてK-Ar年代を測定したところ、黒雲母の年代値として1.14±0.06 Maが得られたことから、下部更新統の堆積物と考えられる。『20万分の1地質図幅「野辺地」(第2版)』(工藤ほか、2021)によると、本地域の鮮新統~下部更新統については、浜田層、甲地層、清水目層およびその相当層が示されており、テフラ層の年代を信頼するならば、浜田層等の上部に対比される可能性がある。ただし、鎌田・斉藤(2004)は、1950年代以降の上北地域~下北半島における第四紀の層位学的研究史にふれながら、野辺地面のような段丘構成層より古く、段丘の基盤をなす地質系統については、鍵層を使った層序対比や確定した地質年代がないため長らく混乱が続いてきたことを指摘しており、地層の対比は慎重に行う必要がある。
本海成層は不整合に段丘構成層に覆われており、複数地点で開析谷を埋めた有機質堆積物が観察できる。開析谷は、MIS5e期の段丘面が形成されたあとに、段丘構成層と海成層を下刻して形成されたと考えられる。さらに、複数地点で観察できる谷埋め堆積物のうち、1地点では洞爺火山灰(109±ca.3 ka;東宮・宮城、2020)が介在していた。一方で、別の谷埋め堆積物ではIshimura and Hiramine (2020) が十和田中掫テフラ(5986-5899 cal. BP; Mclean et al., 2018)が介在していることを報告している。本研究においても、完新世のC14年代値を得ている。これらのことから、本地域ではMIS5e期に段丘面が離水して以降、繰り返された低海面期のたびに河川が段丘面を下刻して段丘構成層と基盤の海成層を侵食し、海水準の上昇とともに開析谷の埋積が起きていたと考えられる。
引用文献
三浦(1968)東北地理;工藤ほか(2021)20万分の1地質図幅「野辺地」(第2版);鎌田・斉藤(2004)弘前大学大学院地域社会研究科年報;東宮・宮城(2020)火山;Ishimura and Hiramine (2020) Journal of Quaternary Science;Mclean et al. (2018) Quaternary Science Reviews
海成層中に介在している2層のテフラ層のうち、上位のテフラ層についてK-Ar年代を測定したところ、黒雲母の年代値として1.14±0.06 Maが得られたことから、下部更新統の堆積物と考えられる。『20万分の1地質図幅「野辺地」(第2版)』(工藤ほか、2021)によると、本地域の鮮新統~下部更新統については、浜田層、甲地層、清水目層およびその相当層が示されており、テフラ層の年代を信頼するならば、浜田層等の上部に対比される可能性がある。ただし、鎌田・斉藤(2004)は、1950年代以降の上北地域~下北半島における第四紀の層位学的研究史にふれながら、野辺地面のような段丘構成層より古く、段丘の基盤をなす地質系統については、鍵層を使った層序対比や確定した地質年代がないため長らく混乱が続いてきたことを指摘しており、地層の対比は慎重に行う必要がある。
本海成層は不整合に段丘構成層に覆われており、複数地点で開析谷を埋めた有機質堆積物が観察できる。開析谷は、MIS5e期の段丘面が形成されたあとに、段丘構成層と海成層を下刻して形成されたと考えられる。さらに、複数地点で観察できる谷埋め堆積物のうち、1地点では洞爺火山灰(109±ca.3 ka;東宮・宮城、2020)が介在していた。一方で、別の谷埋め堆積物ではIshimura and Hiramine (2020) が十和田中掫テフラ(5986-5899 cal. BP; Mclean et al., 2018)が介在していることを報告している。本研究においても、完新世のC14年代値を得ている。これらのことから、本地域ではMIS5e期に段丘面が離水して以降、繰り返された低海面期のたびに河川が段丘面を下刻して段丘構成層と基盤の海成層を侵食し、海水準の上昇とともに開析谷の埋積が起きていたと考えられる。
引用文献
三浦(1968)東北地理;工藤ほか(2021)20万分の1地質図幅「野辺地」(第2版);鎌田・斉藤(2004)弘前大学大学院地域社会研究科年報;東宮・宮城(2020)火山;Ishimura and Hiramine (2020) Journal of Quaternary Science;Mclean et al. (2018) Quaternary Science Reviews