[H-QR05] 第四紀：ヒトと環境系の時系列ダイナミクス

[HQR05-P09] 御前崎地域における阿蘇3テフラの発見（速報）

*佐々木 俊法¹、森本 拓也²、大中 翔平³、大南 久紀²、西村 幸明²、上野 龍之⁴、後藤 憲央⁴ (1.一般財団法人電力中央研究所、2.中部電力株式会社、3.大日本ダイヤコンサルタント株式会社、4.株式会社阪神コンサルタンツ)

キーワード：阿蘇３テフラ、古谷層、御前崎地域

静岡県御前崎地域に分布する更新統古谷層（池谷・堀江，1982）中にガラス質テフラが挟在していることを確認した．調査地は古谷層の中でも下位層準が分布（久松ほか，2024）する御前崎市佐倉である．地名にちなみ同テフラをSKRテフラと仮称する．これまで，古谷層中にはテフラの存在は知られておらず，新たな発見となる．SKRテフラは断層調査の一環でおこなわれたトレンチ法面とその付近のボーリングコア試料で観察された．トレンチ法面では，層厚約3 cmでほぼ水平に分布し，堆積後の浸食や擾乱により断続的な箇所があるが，四面あるすべての法面においてほぼ同じ標高および層厚で確認される．また，級化構造や部層などの層内における垂直変化は認められず，均質である．
実体顕微鏡観察の結果，細粒な火山ガラスが主体で，有色鉱物としては直方輝石を含む．極細砂サイズの火山ガラスは，その多くがバブルウォール型であり，色調の異なる二種類，無色透明なガラスと褐色を帯びたガラスが観察された．これらの割合は，およそ無色透明：褐色が7：3である．
火山ガラスを対象とした，屈折率 (n) 測定の結果，n=1.514-1.517の集団およびn=1.540-1.545の集団からなる二峰性を示した．無作為に抽出した火山ガラスを対象に，エネルギー分散型X 線マイクロアナライザーによる主成分元素組成分析の結果，K₂O/SiO₂プロット上で，およそSiO₂: 70 wt. %，K₂O:5.0 wt. %が中央値となる主集団と，主集団からSiO₂: 63wt. %，K₂O: 3.5 wt. %付近へSiO₂の含有量が小さいほどK₂Oの含有量が小さくなるトレンド状に分布する副集団に分かれる特徴を有することが明らかとなった．
以上の結果は，SKRテフラがAso-3ii（Matsu’ura et al., 2021）に対比されることを強く示唆する．Aso-3iiの降灰層準は，四国沖MD012422コアおよび伊豆諸島沖U1437Bコアの酸素同位体層序からMIS 6である（Matsu’ura et al. 2021, 2023）．
Aso-2～Aso-4間には，火山ガラスの屈折率や主成分がAso-3に類似する広域テフラがいくつか知られている（例えば，長橋ほか，2007）．そこで，SKRテフラがAso-3火砕流起源であることを確実にすることを目的に，Aso-3火砕流堆積物にみられる複数ユニットとの岩石記載学的および化学組成的な対比を試みている．これらの検討結果は，発表時に詳細を述べる．

引用文献：池谷・堀江（1982）第四紀研究，21(2)，75-93．久松ほか（2024）東海自然誌（投稿中）．Matsu’ura et al. (2021) Quat. Sci. Rev. 257, 106808．Matsu’ura et al. (2023) Quat. Sci. Rev. 319, 108305．長橋ほか（2007）第四紀研究，46(4)，305-325．