日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC07] 地球温暖化防⽌と地学(CO2地中貯留・有効利⽤、地球⼯学)

2024年5月28日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、薛 自求(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構)、愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、今野 義浩(The University of Tokyo, Japan)


17:15 〜 18:45

[HSC07-P14] 新第三紀玄武岩~玄武岩質安山岩の物性:溶岩と火山砕屑岩の違いについて

*小坂 日奈子1,2細井 淳1,2 (1.茨城大学大学院理工学研究科、2.産業技術総合研究所地質調査総合センター地質情報研究部門)

キーワード:CO2地中貯留、空隙率、玄武岩、玄武岩質安山岩、新第三紀、主成分全岩化学組成

近年,CCS (Carbon Dioxide Capture and Storage) では貯留層として,砂岩層だけではなく,玄武岩などの火山岩類層へのCO2貯留が試みられている.玄武岩はFe,Mg,Caなどの2価の陽イオンに富んでいることから,砂岩よりもCO2の鉱物化が期待できる点で注目されているが,「玄武岩」や「火山岩」という名称は溶岩や火山砕屑岩,またそれらの発泡度や淘汰度,粒径の異なる様々な岩相の広義的名称である.CO2貯留の際に重要な指標となっている物性は岩相によって大きく異なることが考えられる.

そこで,栃木県芳賀郡茂木町周辺に分布する新第三紀の玄武岩~安山岩質溶岩とその火山砕屑岩を対象として,物性等を調査した.具体的には連結空隙率の測定と全岩化学組成分析,岩石薄片観察を行った.分析した試料は,溶岩が2種類,火山礫凝灰岩が3種類である.溶岩2種類は一方が玄武岩で他方が玄武岩質安山岩である.共に緻密な岩石で,暗灰色を呈し,透明~やや白色の斜長石が肉眼で確認できる.鏡下観察では,斑晶鉱物として斜長石と変質した斜方輝石が見られる.石基はインターサータル組織で,斜長石のほかに,斜方輝石と単斜輝石,不透明鉱物が見られ,2種類の溶岩で結晶度がやや異なる.火山礫凝灰岩は暗灰色の溶岩岩片を多く含み,大きいもので約1mmの亜角礫が見られる.基質には2mm程の白色の斜長石が見られる.鏡下観察では,斜長石,変質した斜方輝石と単斜輝石,不透明鉱物,茶色の変質鉱物などが見られる.

空隙率測定の結果は,連結空隙率はそれぞれ,溶岩試料で約2.8%~3.2%,凝灰角礫岩で約27%~30%であり,両者で大きな差が認められた.この結果は,CO2貯留の点で地質を検討する際に,「玄武岩」や「火山岩」だけでなく,少なくとも溶岩か火山砕屑岩かの判断も重要であることを示唆する.