17:15 〜 18:45
[HSC07-P15] CCSコスト試算ツールを利用した処理コスト低減のための検討
キーワード:CO2排出源、パイプライン輸送、船舶輸送、ジャッキアップリグ、セミサブリグ、集約化
背景
近年の世界各地で発生する異常気象は、温室効果ガスの影響を広域的に知らしめ、各国におけるCO2の削減目標をより挑戦的な値に更新させている。IEA(2021)の試算では、2050年カーボンニュートラルへの取組みを軌道に乗せるためには、それまでに全世界で年間76億tのCO2を貯留する必要があるとしている。その数値を我国の排出量に見合う値に換算すると年間2.4億tとなるため、これを我国におけるCCS等の目標値の一つとみなすことに特段の疑問はない。
一方、事業者がCCSの導入において最も憂慮するのが、CCSの処理コストである。設備メーカーやエンジニアリング会社では、既に各設備の効率化や低価格化、処理フローの見直し等によって、コスト低減への取組みを進めていると考えられる。これに加え、CCSは複数の工程を有することから、CCS全体の最適化によっても、コストの低減は可能であると考えられる。
このような観点から、二酸化炭素地中貯留技術研究組合では、国内で想定される様々な形態のCCSを対象に、それぞれのシナリオに基づいて、適切にコスト試算を行うためのツールを開発してきた。本ツールでは、ケース毎にパラメータを変更しながらコストの違いを確認できるほか、複数のケースを同時に実行して、一度に比較検討する機能も備えている。
ポスター発表では、本ツールで対応可能な試算のほか、コスト低減のための検討例について報告する。
我国で想定されるCCSと本ツールで可能な試算
排出源では火力発電所からのCO2排出量が最も多く、続いて製鉄所やセメント工場等からの排出量が多い。そのため、先ずはこれらの大規模排出源から回収するのが効果的である。現在、本ツールでは、石炭火力発電所とLNG火力発電所について試算が可能であり、その他の排出源も順次組込む予定である。輸送では、大量輸送ができるパイプライン輸送(陸上、海底)と船舶輸送が候補として挙げられる。本ツールはそれらの輸送方式に対応可能である。貯留では国内の場合、海底下貯留が主であると考えられ、陸上もしくは海上基地からの圧入の可能性が高く、本ツールでもそれぞれの代表的な方式に対応できるように構築した。
CCS処理コスト低減のための検討例
1)貯留方式の違いによるコストへの影響
海底下貯留を行う場合、離岸距離や水深によって実施可能な貯留方式が異なる。最も安価な方式は、陸域から傾斜井を利用することであり、逆に高額となるのはセミサブリグの利用である。そのため、陸域からの貯留が可能な地点にCO2の受け入れ基地を置くのも、コスト削減対策として有効と考えられる。ただし、それが可能なのは、貯留地点までの離岸距離が3km以内とされている。
離岸距離が3kmを超えると、ジャッキアップリグまたはセミサブリグの利用が考えられる。いずれを用いるかは水深で異なり、100m未満では前者が、それ以上では後者が選択される。コスト的にはジャッキアップリグはセミサブリグよりも安価である。
その他、モニタリングも水深の影響を受ける。水深が浅い(50m未満)と震探船がストリーマを牽引することができないため、OBCを海底に敷設する。これにより、水深が浅いとコスト高となる。
発表では、上記の要素がコストに与える影響について報告する。
2)集約化グループ構成時の支援
沿岸域工業地帯では、都市域や内陸部と比べて、パイプライン敷設の障壁は低いと考えられ、それによってCO2を集約化して、スケールメリットによるコスト削減を実現しやすいと期待できる。
その際、集約化を提案する側としては、どの排出源を取り込むのが効果的であるかの検討は重要であり、また排出源側としても、どのグループに参加するのが得策であるかを調べる必要がある。それらの検討のためには、グループ毎で期待される排出量の合計や排出源とハブまでの距離等を考慮した試算が必要となる。
本ツールは、こうした集約化グループの構成を考える上での支援ツールとしての利用も考えており、その検討例について報告する。
3)事業開始後に回収量を増やす場合の比較
事業開始以降、数年後にCO2の処理量を増やすことが計画されている場合、事業開始当初から予想される最大の処理量に対応できる設備を設置するのが有利か、処理量の増加に合わせて設備を増強する方がコスト的にメリットが大きいかは、事業者のシナリオ毎に異なると考えられる。本ツールは、そのような検討にも活用できると考えており、その検討例を報告する。
近年の世界各地で発生する異常気象は、温室効果ガスの影響を広域的に知らしめ、各国におけるCO2の削減目標をより挑戦的な値に更新させている。IEA(2021)の試算では、2050年カーボンニュートラルへの取組みを軌道に乗せるためには、それまでに全世界で年間76億tのCO2を貯留する必要があるとしている。その数値を我国の排出量に見合う値に換算すると年間2.4億tとなるため、これを我国におけるCCS等の目標値の一つとみなすことに特段の疑問はない。
一方、事業者がCCSの導入において最も憂慮するのが、CCSの処理コストである。設備メーカーやエンジニアリング会社では、既に各設備の効率化や低価格化、処理フローの見直し等によって、コスト低減への取組みを進めていると考えられる。これに加え、CCSは複数の工程を有することから、CCS全体の最適化によっても、コストの低減は可能であると考えられる。
このような観点から、二酸化炭素地中貯留技術研究組合では、国内で想定される様々な形態のCCSを対象に、それぞれのシナリオに基づいて、適切にコスト試算を行うためのツールを開発してきた。本ツールでは、ケース毎にパラメータを変更しながらコストの違いを確認できるほか、複数のケースを同時に実行して、一度に比較検討する機能も備えている。
ポスター発表では、本ツールで対応可能な試算のほか、コスト低減のための検討例について報告する。
我国で想定されるCCSと本ツールで可能な試算
排出源では火力発電所からのCO2排出量が最も多く、続いて製鉄所やセメント工場等からの排出量が多い。そのため、先ずはこれらの大規模排出源から回収するのが効果的である。現在、本ツールでは、石炭火力発電所とLNG火力発電所について試算が可能であり、その他の排出源も順次組込む予定である。輸送では、大量輸送ができるパイプライン輸送(陸上、海底)と船舶輸送が候補として挙げられる。本ツールはそれらの輸送方式に対応可能である。貯留では国内の場合、海底下貯留が主であると考えられ、陸上もしくは海上基地からの圧入の可能性が高く、本ツールでもそれぞれの代表的な方式に対応できるように構築した。
CCS処理コスト低減のための検討例
1)貯留方式の違いによるコストへの影響
海底下貯留を行う場合、離岸距離や水深によって実施可能な貯留方式が異なる。最も安価な方式は、陸域から傾斜井を利用することであり、逆に高額となるのはセミサブリグの利用である。そのため、陸域からの貯留が可能な地点にCO2の受け入れ基地を置くのも、コスト削減対策として有効と考えられる。ただし、それが可能なのは、貯留地点までの離岸距離が3km以内とされている。
離岸距離が3kmを超えると、ジャッキアップリグまたはセミサブリグの利用が考えられる。いずれを用いるかは水深で異なり、100m未満では前者が、それ以上では後者が選択される。コスト的にはジャッキアップリグはセミサブリグよりも安価である。
その他、モニタリングも水深の影響を受ける。水深が浅い(50m未満)と震探船がストリーマを牽引することができないため、OBCを海底に敷設する。これにより、水深が浅いとコスト高となる。
発表では、上記の要素がコストに与える影響について報告する。
2)集約化グループ構成時の支援
沿岸域工業地帯では、都市域や内陸部と比べて、パイプライン敷設の障壁は低いと考えられ、それによってCO2を集約化して、スケールメリットによるコスト削減を実現しやすいと期待できる。
その際、集約化を提案する側としては、どの排出源を取り込むのが効果的であるかの検討は重要であり、また排出源側としても、どのグループに参加するのが得策であるかを調べる必要がある。それらの検討のためには、グループ毎で期待される排出量の合計や排出源とハブまでの距離等を考慮した試算が必要となる。
本ツールは、こうした集約化グループの構成を考える上での支援ツールとしての利用も考えており、その検討例について報告する。
3)事業開始後に回収量を増やす場合の比較
事業開始以降、数年後にCO2の処理量を増やすことが計画されている場合、事業開始当初から予想される最大の処理量に対応できる設備を設置するのが有利か、処理量の増加に合わせて設備を増強する方がコスト的にメリットが大きいかは、事業者のシナリオ毎に異なると考えられる。本ツールは、そのような検討にも活用できると考えており、その検討例を報告する。
