日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-AG 応用地球科学

[M-AG33] 原爆による「黒い雨」領域の推定に関する基礎的研究

2024年5月31日(金) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:五十嵐 康人(京都大学複合原子力科学研究所)、遠藤 暁(広島大学大学院先進理工系科学研究科)、横山 須美(長崎大学)、石川 裕彦(京都大学複合原子力科学研究所)

17:15 〜 18:45

[MAG33-P05] 「黒い雨」再現計算のための爆発モデル開発

*中森 一郎1、高橋 邦生1富塚 孝之1、今中 哲二2、石川 裕彦2、五十嵐 康人2 (1.アドバンスソフト株式会社、2.京都大学複合原子力科学研究所)

キーワード:黒い雨、爆発モデル

ここでは爆発モデルの計算手法の概要を述べる。起爆直後からある一定時間が経過した後の状態を爆発再現のための初期値として使用し、半径数十メートルの高温高圧の一様なガス球体として計算を実施する方法は、BetheらによるLosAlamos研究所レポート(LA-1020)に記載がある。LA-1020とLA-1021を統合した文献はLA-2000として現在公開されている。本報告では、主としてLA-2000に記載の手法に沿って起爆後の状態量をエクセルで計算する仕組みを作成し、爆発シミュレーションの初期値として使用することとした。なお、爆発の規模については、広島原爆のTNT換算値は16 ktとされてきたが、周囲への爆圧状況を考慮し、本報告においては10 ktとして起爆に際するエネルギーとして扱うこととした。
キノコ雲の形成に関しては、火山の噴煙についての手法に沿って起爆直後から噴煙が上昇するまでの過程を、シームレスにシミュレーションすることとした。なお、本報告においてはキノコ雲に含まれる粉塵は、爆弾本体に由来する粉塵と地上建築物に由来する粉塵と2種類をそれぞれ扱えるようにした。起爆後のキノコ雲の上昇過程では、強い上昇気流によりトーラス状の3次元渦が形成される。この位置を時刻とともに追跡をし、雲の成長過程を検証することを目的として、過去の類似のシミュレーションと核実験データの比較を実施しところ、本作業においてTNT換算値10 ktと設定した初期値を用いた場合にはシミュレーション結果と実験データが良く一致すること分かった。
爆発規模の予測精度を検証することを目的として、地上を伝播する衝撃波に起因する爆圧に関して比較検討を行ったところ、起爆エネルギーを10 ktに設定するほうが広島の地上での過圧とよく一致することが確認された。上述した検証を踏まえて粉塵濃度分布について、起爆地点を通る中心断面上で原爆由来の粉塵の濃度分を可視化した。これらの結果から、火球が地表面付近まで膨張するが、途中から強い上昇気流によって球状の濃度分が変形し、その後上昇に転じる様子が伺える。