17:15 〜 18:45
[MAG33-P06] 広島地方における放射性降下物の分布と拡散に関する研究
キーワード:Cs-137、過剰Pb-210、インベントリ、原爆、大規模核実験、土壌
土壌中に含まれる137Csの起源としては、主に1950-60年代に米ソが実施した大規模大気圏核実験、チョルノビリ原発や福島第一原発などの事故、英仏の再処理工場からの直接放出などが挙げられる。しかし、大規模核実験に先立ち、1945年に広島・長崎に投下された原子力爆弾由来の放射性核種により、広島・長崎は壊滅的な被害に襲われ、局地的なフォールアウトがあったことが知られている。本研究では、広島における原爆由来の放射性核種の影響範囲を明らかにすることを目的とした。広島では5㎞毎に120メッシュに分割し、土壌層を薄く剥ぎ取っていくスクレーパープレート法により30㎝の深度まで土壌試料を採取した。このうち、人による覆土や土壌掘削等の手が加えられていない、未改変土壌中の放射性核種の濃度分布を調べた。対象とした放射性核種は、137Csと地表面から散逸する222Rnの壊変生成核種で、降水や乾性沈着によって大気から地表に供給されている自然放射性核種210Pb(過剰210Pb;ex210Pb)であり、これらは森林土壌浸食などの調査研究においてトレーサーとして使用されてきた。土壌中の137Cs濃度は、表層(0-10mm)よりも深い30-100mmの層で最大値を示し、これは1960-63年ごろの137Cs降下量が最大であった時に対応しているものと考えられた。1945年の原子爆弾由来の137Csは、大規模核実験ピークの下層に小さいピークが認められる試料もあったが、ほとんどの場合、原爆後の大規模大気圏内核実験由来の137Csのシグナルに隠れてしまい、明瞭には判別できなかった。137Cs及びex210Pbインベントリは、爆心地から北西の地域で大きく、これは降水量と相関があることから、土壌中137Cs・ex210Pbの主な起源は降水による土壌への沈着であるものと考えられる。137Cs/ex210Pb比は、137Csとex210Pbインベントリが大きい北西部で大きかった。比が大きい地域の土壌は主に褐色森林土からなり、比が小さい地域は未熟土であったことから、降水量の影響とともに土壌の性質の違いによって137Cs,ex210Pbの分布の違いが生じたものと考えられる。今後、対象地域だが未改変試料が入手出来ていないメッシュについても、新たにデータを加えて水平分布を明らかにすること、また1945年に相当する層の同定とそれに付随して原子爆弾由来の137Cs の水平分布の推定を行うことで、原爆由来の放射性核種が降下した地域やその量を明らかにすることを目指す。
#土壌中の放射性核種の分析は、多くの研究者や企業の協力によって行われました。紙面の都合上、気象土壌ワーキンググループとして記載いたしました。
#土壌中の放射性核種の分析は、多くの研究者や企業の協力によって行われました。紙面の都合上、気象土壌ワーキンググループとして記載いたしました。